これはEUの多層的な統合体の色彩を更に強めることになる。既に加盟国の中でも、まず1)英国、デンマークとスウェーデンは国内での政治的な理由から1通貨統合には参加しない立場を表明している。そして2)英国とアイルランドはシェンゲン地域には入らず、かわりに国境での他のEU諸国からの旅行者の入国に際し、入管手続きは引き続き行うものとした。アムステルダム条約準備のための政府間会議では、共通の防衛政策が議題として持ち得出されたが、今回は失敗に終わった。
この傾向は長期的にはヨーロッパにとってかなり深刻な影響をもたらすかもしれない。自動的に中欧諸国に「二等国」のレッテルをはることは、これらの国で政治的反動をまねく恐れがあるだけでなく、欧州における「地域格差」もしくは「時間差」を例外でなく原則としてしまう。これはさらに中欧の統合を先送りすることにつながる。平等な加盟国の権利・義務と共に明白で透明性のある加盟条件は、加盟国及び加盟希望国の中で必要な改革を進める上で、またヨーロッパの安定と繁栄にも不可欠である。
約束された善行への報奨はなくなる?
また現在進行中の加盟手続きは、六つの「先行国」に対する現在の審査に続く欧州委員会の審査は非常に形式的なものになると予想されるの対して、その他の「後発国」に対するものはかなり厳しいものになるであろう。これは二つのグループに対するアプローチが異なるところに一因があるが、2「後発国」の加盟手続きがどのように行われるかは非常に不透明である。
これは「後発国」(この分類は「除外国」を避けるために使われる)であるラトビア、リトアニア、スロバキア、ルーマニアとブルガリアが実際にまたどのように「先行国」に格上げされる可能性があるかという疑問には答えがないことを意味する。既に述べたように、理論的には一九九七年十二月のルクセンブルグ首脳会議で第二陣の加盟希望国もEU基準へ急速な調整を行えば第一陣への格上げは可能になったはずである。確かにEU加盟国の官僚の中には内々でスロバキア、ラトビアまたある程度リトアニアも発展をみせ、「先行国」のグループに格上げされる機会を与えられるべきだとの発言もあるようである。しかし、ブラチスラァバでの現在の政治状況は(メチアン首相によると)スロバキアの格上げを遅らせ、スロバキアでの来る選挙結果がこの状況に何らかの変化をもたらすかはまだ不明である。EU加盟国によれば、ブルガリアとルーマニアにも「先行国」への格上げを可能にする適応状況の大幅な改善措置はみられない。欧州委員会は十一月半ばには十二月に開かれるウイーン・サミットでの勧告を提示する予定である。
ルクセンブルグでは、非加盟国の動向について一九九八年には審査をし、またそれ以降は定期的に評価がなされるべきであるとの結論が出された。(理論的には成績の芳しくない「先行国」を格下げすることも考えれらるが、これは実際には起こらないであろう。)この「定期的に」が何を意味するのかは定義されておらず、加盟国の立場はかなり食い違うようである。