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第1セッション

 

EU拡大

--新規加盟の勢い喪失とその理由--

 

EWIヨーロッパ安全保障副所長

ダグ・ハーテリウス

 

欧州連合(EU)諸国指導者たちの中欧諸国加盟に対する明らかな歓迎表明にもかかわらず、拡大に対する熱意は多少醒めてきているようである。十月五日にEU加盟国外相らは十一月十日に新規加盟への正式交渉を開始すると決定した。しかしEU拡大には不確定性と加盟実現への重要な課題を回避する風潮がつきまとっている。ルクセンブルグで一九九七年暮に第一陣としてエストニア、ポーランド、チェコ共和国、ハンガリー、スロベニア(とキプロス)-いわゆる「先行六カ国」-に加盟を拡大するとの合意にも拘わらず、加盟国はむしろ単一通貨ユーロ導入問題(十五ヵ国中ユーロ圏に加わる十一ヵ国)やEUが直面する他の構造的問題に焦点をあてている。

 

新規加盟への道筋

EUを拡大するとのルクセンブルグ首脳会議での一九九七年十二月の決定に従い、加盟国とEU拡大第一陣候補六カ国との政府間交渉が一九九八年三月三一日に正式に始まった。同時にEUの超政府機構である欧州委員会は加盟予定国との共通のEU基準である既成事実(acquis communitaire)適合審査を正式交渉が必要になる分野特定のために開始した。十月五日の決定は、多少の議論の末十一月十日に予備審査で露呈した分野についての正式交渉を開始する旨を確認した。審査はすべての分野が正式な政府間交渉に委ねられる一九九九年夏まで継続される。

加盟希望国の第二陣候補-いわゆる「後発組」のラトビア、リトアニア、スロバキア、ルーマニアとブルガリアの五国-とは政府間交渉ではなく予備折衝が第一陣候補の審査と平行して行われる。欧州委員会によるこの審査は、多国間交渉にとどまり、一九九九年一月・二月までは二国間交渉には至らない。政府間交渉がいつ始まるかも明らかではない。

欧州委員会の勧告-一九九七年七月に発表された「アジェンダ2000」とルクセンブルグ・首脳会議-により、理論的には加盟希望第二陣の国も急速に発展を遂げた場合、先行する第一陣グループに格上げされうる。同様に、理論的には第一陣候補国もEU基準に対する適応が遅れる場合は、第二陣に格下げされることもありうる。これらの格上げ・格下げの基準は合意されておらず、欧州委員会は十一月に来る十二月のウイーン・サミットでの具体的な勧告内容を決定する過程にある。

 

 

 

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