両氏の意見に対し参加者からは、1]NATO既加盟国にとっての拡大の意義、2]拡大コストの負担問題、3]ロシアヘの配慮を含めたNATOの更なる拡大のあり方等、について活発な議論がなされるとともに、4]NATOの拡大問題に関連する最近のロシアの政治・経済情勢についても議論が及んだ。
第3セッション「EU通貨統合の進展」
嘉治 佐保子 助教授(慶応大学)は、ユーロ導入の欧州経済および世界経済への影響という観点から報告を行なった。嘉治助教授は、1]ディシプリンの効いた金融・財政政策が長期的に運営されれば欧州域内の構造調整を促すとともに、経済活性化に資する、また、2]ユーロが国際通貨としてどの程度受け入れられるかについては今後の推移を見守る必要があるが、仮にユーロが国際的に広く受け入れられれば世界経済にも望ましいことである、とした。
マーク・フランドロー助教授(フランスの国立科学研究センター<CNRS>研究員、政経学院助教授)が、今年6月に創設された欧州中央銀行について、その直面する課題を論じ、欧州中央銀行が、1]自らの政策についてのaccountabilityや情報開示の確保、2]ユーロ導入に伴う域内各地域の構造変化の把握、3]為替政策との関わり、という3つの分野においてそれぞれジレンマを抱えており、これを克服していくことが必要であるとした。
モレノ・ベルトルディ氏(駐日欧州委員会代表部 一等書記官)は新通貨ユーロ導入の国際的なインプリケーションについて報告し、中長期的にはユーロがよリバランスのとれた国際通貨制度の確立に貢献し、それを通じて為替市場を安定化させるとの見方を示した。
これらの報告を受けて参加者からは、1]EU諸国における財政政策運営、特に景気後退時における拡張的財政政策の可能性、2]ユーロがドルと並ぶ基軸通貨となる可能性とそのインプリケーション、3]EMU参加のメリットとデメリット、4]依然として10%近い、高い失業率にある欧州諸国の雇用問題への影響、5]アジアにとっての通貨統合の意義、5]国際資本移動規制の是非、等を巡って活発な質疑が行われた。