日本財団 図書館


公開シンポジウムの概要

 

11月18日に行われた公開シンポジウムは、大河原良雄当研究所理事長の司会進行により、日本からは嘉治佐保子助教授(慶應義塾大学経済学部)、欧州からはナイジェル・エバンス氏(駐日欧州委員会代表部公使)、ロタール・ルール教授(ケルン大学政治・ヨーロッパ問題研究所)、米国からはジョン・ケリー大使(元駐フィンランド米国大使)、アジアからはユスフ・ワナンディ氏(インドネシアCSIS会長)の5名の招聘者に、当研究所佐藤研究主幹が加わり、6名のパネリストにって行われた。

 

はじめに大河原理事長がクローズド・セッションの概要を報告した。報告は、第1セッション「EU統合の進展と国民国家の変質」では、エバンス氏がEU統合・発展プロセスの問題点を指摘し、ハーテリウス氏はEUの拡大に指導者達の熱意が醒めつつある点を強調したこと、第2セッション「NATOの東方拡大とロシアの対応」では、ケリー大使がNATO拡大の世界的な重要性、ロシアヘの影響を強調し、ルール教授はロシアはNATO拡大を阻止できず、現実に適応していくべきだとしたこと、第3セッション「EU通貨統合の進展」では、嘉治助教授がユーロ導入は欧州の域内経済や世界経済にも望ましいものになろうとし、フランドロー助教授は欧州中央銀行(ECB)のaccountabilityや情報開示の確保を論じ、ベルトルディ氏は中長期的にはユーロがバランスのとれた国際通貨制度の確立に貢献するとし、また、ユーロの基軸通貨としての意義を巡り活発な討議が行われたこと、第4セッション「拡大ヨーロッパの東アジアヘのインプリケーション」では、キノック氏が欧州の拡大は加盟国のみならず世界経済の安定にも貢献するとし、タクール教授はNATO拡大はロシアの立場に変更を迫り、中ロ関係やアジア太平洋地域にも影響を与えるとし、植田教授は日欧の協力関係は強化されつつあり、日露関係の改善に寄与したと論じ、ワナンディ氏はアジアが欧州型地域レジームから学ぶべきことを強調したこと、などを中心に行われた。

 

報告に引き続き、各パネリストからプレゼンテーションが行われた。まずエバンス氏が、EUは継続的な統合・発展プロセスにあり、各加盟国間でこれまでも不可能と思われるような交渉を成功に導いてきた経験を有しており、実現について多くの懐疑的な見方をされてきたユーロは導入を目前に控えており、現実の政治・経済的な統合は着実に進展しているとした。ケリー大使は、NATOは冷戦終了後の現在でも有効な安全保障システムであるが、ロシアはみずからについての自信を失っているとともに、ヨーロッパ諸国の動向には神経を尖らせており、政治的な安定を乱さないためにもロシアを不必要に刺激しないように、NATOの拡大漸進的に注意深くなされるべきであることを強調した。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION