シート100
「内規は存在しない」の手引き
建築確認課の対応中、問題と思われる次の2点について考えてみましょう。
1 内規の環境基準の存在を隠そうとしたこと
本件では情報公開は制度化されていませんし、実態としての開示努力についても、開示するか否かは、情報を有している原局の判断に委ねられているようです。しかし、情報開示の精神を忖度すれば、それは原局が恣意的に判断することを意味するものではなく、対交機密やプライバシーを損なうおそれなど、具体的に非開示により保護すべき利益の有無を原局が判断することを意味しているに過ぎないのです。
本件の場合、建築確認課が環境基準の内規を開示しなかったのは、こうした公益を保護するためではありません。内規を開示したら、その内規の不完全さを指摘されたり、今までの判断の適否について疑問を投げかけられたり、今後の業務遂行において自分たちが自由に判断できなくなって面倒だと、自分たちの利益を守るために開示しなかったに過ぎないのです。本件では、そのため内規の存在まで否定しているのです。
行政は、情報公開制度の有無にかかわらず、その判断の基となった情報や基準を積極的に開示し、行政の判断の妥当さを住民に説明することが求められているのです。そして、住民に説明しなければならないという緊張感や住民との意見・情報交換が、よりよい公正な判断を導くのです。
2 住民との対応を避けたこと
本件の堀口係長の言辞からは、住民との対応は業務遂行とは関係のない無駄な作業である、直接の関係者でもない住民が、なぜ、業務遂行に口出しするのか、という意識が窺われます。
しかし、住民への対応は行政の重要な職務であり、かつ責任です。法令に基づき、適正に業務を遂行しているのだから、文句を言われる筋合いはない、住民に説明などする必要はないという態度は感心できません。公務員は住民の信託を受けて、公務を遂行しているのであり、住民から要望があった場合には、公益に反しない限り、自らが行っている業務について説明することが公務員の責務なのです。