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説明は主に山本局長が行いました。ときどき大臣から質問が発せられ、事務方の考えと一致する方向での大臣の質問に対しては局長は的確に答えていましたが、事務方の方針と異なり、現在の運用方法を否定するような方向での質問に対しては、質問の趣旨をはぐらかし、核心をはずしながら答えているように、坂井係長には見えました。
我が国の年金運用についての説明に続き、諸外国の年金運用についての説明が始まりました。大臣からは、資料に掲載されている国以外の状況はどうなっているのか、各国の運用益利率はどうなっているのかという質問が出されました。坂井係長は局長がどのように答えるのか固唾を飲んでいましたが、局長は、その他の国については把握しておらず、運用益利率については技術的にその率を正確に出すことができない旨、淡々と答えました。
結局、大臣から改正に対する指示など出されることもなく、年金運用に関する説明は、終了しました。大臣室から出て、局長室に向かう廊下で、山本局長が安川課長に「うまくいったな。これで運用を改正しようなどと大臣も言い出さないだろう。どうせ、大臣は年金受給額をあげて、国民の人気を取りたいだけなのさ。この財政難、高齢化社会が急激にやってこようという時代に、そんな人気取り政策を取られたんじゃたまらないからな。」と話しかけているのが聞こえてきました。坂井係長は、何だか割り切れない気分になりました。
関山大臣は、その後、年金の運用改正について意欲を示すこともなく、安川課長の予測どおり、次の内閣改造では新しい大臣が就任しました。
(議論のポイント)
・山本局長や安川課長の対応についてどう思いますか。