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公務の役割とその変遷

 

国は、その支配する国土と人民を守り、治めることを役割として、誕生したと言われています。いわゆる夜警国家の出現です。その後、これらの役割に加えて、災害を防ぐための治山・治水や食料の安定的生産のための灌漑事業などが国により行われるようになりました。

中央集権的な国家が成立する時代になると、国は富国強兵とともに、産業の育成、振興を行うようになりました。その後、経済システムとしては、資本主義経済と社会主義経済の2つに集約されていきますが、前者の下では、企業活動の行き過ぎなどによる様々な弊害を防止するため、後者の下では、国自らが経済発展を計画・実施するため、いずれにおいても、ますます国の役割が増大していきました。

こうして産業や都市化が進展するに伴い、国民、企業の活動も拡大していきましたが、さらに活動を拡大するためには、水道、電気、住宅、交通などのインフラの整備が不可欠でした。そして、巨大な資本を必要とするこれらの社会資本整備は、国が行わざるを得ませんでした。

さらに、国民の経済的・社会的権利などに対する意識の拡大などに伴い、社会保障、社会福祉、公衆衛生、医療、教育などの諸分野でも国の関与が求められるようになりました。特に、経済の高度成長とともに、この分野での政府によるサービスの範囲と規模は、一段と増大し、国の活動の国民生活への関わりは、一層深く、大きくなりました。いわゆる福祉国家の出現です。

以上の公務の活動を、民間の活動との関係から分類すると、次の4つに大別されます。

1] 民間では行うことができない又は行うことが適当でない活動

(外交、警察、消防、災害復旧、港湾・道路等の社会資本整備など)

2] 民間の活動を助成する活動

(各種の補助金など)

3] 民間の活動を規制する活動

(各種の許認可や環境、労働などの保護規制など)

4] 民間の活動を補完する活動

(国公立の学校、病院、福祉施設、郵便貯金など)

近年、多くの国では、民間資本の充実、経済成長の低下や財政危機などに伴い、公務の役割の見直しについて議論しています。特に、公務と民間との関係を見直し、公務は上記1]の活動を中心に行うべきで、民間が行える活動は極力民間に任せ、政府は、民間活動が社会規範などを侵害しないように監視し、また、侵害が生じた場合にはその被害の救済を図るという役割に限定してはどうかという議論が盛んです。

 

 

 

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