はじめに
我が国における国際化の進展は著しく、また、国際社会における我が国の社会的、経済的地位の向上に伴い、我が国の果たすべき責務も増大している。
その責務を果たすべく、我が国はこれまで、発展段階にある諸外国への経済的な支援はもとより、それら諸国の政府職員等を研修員として受け入れるなど、人材育成・知的支援にも積極的に努めているが、そうした支援への期待は一層高まっている情勢にある。なかでも開発途上国及び市場経済化を図る国々から、その国の経済社会の発展を支えるべき行政の効果的・効率的な運営に対する寄与が期待されているところである。
このような状況の下、開発途上国等の行政水準の向上には、公務の果たすべき役割、行政サービスの在り方など公務・行政への視点のみならず、行政に携わる公務員の資質の向上に目を向けることも不可欠である。そのためには、接遇、汚職防止をはじめとする倫理高揚、部下の育成、仕事の管理など、公務員としての行動規範・意識に着目する必要がある。
本調査研究は、このような視点から、平成8年度からの3か年計画で、市場経済化を進めている東欧諸国並びに我が国と関係の深い東南アジア諸国における公務の実態及び問題点等の調査研究を行い、開発途上国政府職員等の人材育成に関する研修プログラムの開発を目的として実施してきたものである。
その最終年に当たる本年度においては、過去2年における調査結果をもとに、開発途上国等の公務員各人が、効率的な公務遂行について自ら考え、高い士気・倫理観のもとに職務が行えるように啓発することを目的として、「信頼される公務員になるために一効果的・効率的な公務遂行のための100のシート」と題する研修教材を開発することとし、ここに完成するに至った。
本研修教材が開発途上国等の職員の人材育成の一助になれば幸いである。
この調査研究は、財団法人日本船舶振興会(日本財団)の補助事業として実施されたものであり、同財団の援助に対してここに深甚な謝意を表する次第である。