〔注〕
(1) 詳細については拙著『現代アメリカ経済と財政』東洋経済新報社、1992年、参照。
(2) Kenyon,D.A., "Tax Policy in an Intergovernmental Setting," R.C.Fisher ed.,Intergovermental Relations, Kluwer, 1998, pp.83-84.
(3) National Coference of State Legislatures & National Govermors Association, Financing State Government in the 1990s, NCSL & NGA, 1993.
(4) Straus,R.P., "Consideration on the Federal Collection of State Corporate Income Taxes," State Tax Note 1, No.3, September 1991.
(5) 1976年、州の財産税課税に強い不満を抱いていた鉄道業界の働きかけを受け、連邦議会は4R法を制定した。4R法のSec.306は州及び地方政府が鉄道資産に対して、他の事業用資産よりも高い実効税率で課税することを禁じている。4R法では「鉄道を差別的に取り扱う他のいかなる租税の賦課も禁ずる」と規定されているが、その法的解釈について連邦裁判所の一連の判断は、鉄道が所有しないような種類の資産に対して非課税措置を講じることは鉄道に対する差別的な取扱いであるとする。
ところで、通常、州税や地方税に対して不服がある場合、州政府の税務当局や州裁判所に対して不服審判の請求等を起こし、最終的に連邦最高裁判所にまで持ち込まれるというプロセスがとられる。しかし、4R法では鉄道会社が直接に連邦裁判所で訴訟を行うことができる。そして、一般には(鉄道資産以外の資産の所有者は)まず、納税を行って後に控訴が行える(勝訴すれば納税額は還付される)のに対して、鉄道会社のみ、実際の納税前に控訴を起こすことができるのである。
鉄道会社に対するこうした特別の措置には以下のような問題がある。まず、州裁判所ではなく連邦裁判所に問題が持ち込まれることに関して、連邦裁判所には個々の州レベルの財産税に関する十分な情報・知識があるわけではないので、その分、鉄道業界は有利な立場に置かれる。次に、連邦裁判所の司法判断はそのまま州・地方の歳入減につながり、とりわけ地方レベルでの予算が大きな影響を受ける。連邦裁判所、さらには連邦議会という変則的なルートで鉄道業界が財産税の減免を受けることは、課税の公平が損なわれることにほかならない。
また、「鉄道を差別的に取り扱う他のいかなる租税」の規定が明確ではないため、鉄道会社は自らにとって望ましくない州・地方税について連邦裁判所に訴訟を起こすことができる。例えば、農作物や家畜のような農業資産に対する非課税が、それを適用されない鉄道への差別的措置であるとして連邦裁判所に4R法違反と判断されたケースも実際に存在する。4R法に基づいてなされた司法判断は、ネブラスカをはじめ多くの州の税制を長期にわたり混乱させ、特定の産業が連邦裁の判決を通じて法の範囲と影響力を拡大させ、その結果、連邦優先課税権を強化させたのである。
鉄道業が特権を享受していることをみて、他の産業も議会から同様の恩恵を受けようとした。議会は既に4R法に類似の特権を自動車運送業、バス会社、航空会社にも与えていた。他の州際の公益事業や運輸産業も同様の州課税当局(Taxing Authority)の優先権を求めた。もし、それらの要求に一つでも応じたならば、他の産業にもそのような特権を拡大させることは不可能である。
(6) Mikesell,John L., "State Sales Tax Policy in the Changing Economy,"in Minesota Department of Revenue, Model Revenue System for Minesota, July 1992.
(7) Hellerstein,W., "Sales Taxation of Services:An Overview," and Fox,W.F., "Sales Taxation of Services:Has Its Time Come,"in Willialm F.Fox ed.,Sales Taxation:Critical Issues in Policy and Administration, Praeger, 1992, pp.41-50,51-62.
(8) Fox, William F. "Tax Structure and the Location of Economic Activity Along State Borders," National Tax Journal, Vol.39, No.4, December 1986, pp.387-401.
(9) Bartik, "Small Business Staart-Ups in the U.S.:Estimates of the Effects of Characteristics of States," Working Paper No.87, Dept. of Economics and Business Administration, Vanderbilt University, 1987.
(10) ACIR, Significant Features of Fiscal Federalism:1994, Vol.1