(2)地方団体が連携した徴収確保対策
徴収確保対策として各地方団体においては、様々な努力が行われているところだが、今後の分権型社会においても地方団体が相互に協力して徴収確保対策を講じていくことが必要と考えられる。
昨年の中央省庁等改革基本法制定にあたっては、国と地方を通じた徴税一元化による徴収体制の効率化も取り上げられたが、地方自治との関係やそれぞれの税の性格など議論されるべき多くの問題があり、まずは、都道府県や市町村が協力して、徴税体制の効率化を図っていくことが考えられる。
アンケー卜調査においては、現在、地方税の賦課徴収事務で何が課題となっているかという問いに対して、町村では約8割が「滞納処分の執行」と回答しており、その理由として「多角的に住民に接する町村職員では滞納処分の強制執行は行いにくい」「不動産の公売、差し押さえなどは高度な専門的知識を持った職員が必要だが、それが不足している」といった回答が多かった。
また、今後の地方税の賦課徴収事務における課題として「地方団体相互間の連携、協力体制の充実」を選択した団体が、町村では3分の1にのぼっている。
小規模な市町村においては、税務職員も少なく、人事ローテーションのため職員の経験年数も短くなりがちで、しかも滞納整理の事案も少ないといった傾向があるため、このような回答が多くなっていると考えられるが、こうした隘路を打開するため、県や市町村が協力して徴収確保対策を講じている事例をみてみる。
1]県と市町村の協力
神奈川県では、いわゆるバブル崩壊後の税収減が大きく、これに危機感を抱いた県と市町村が協力して、個人住民税をはじめとする地方税の総合的な税収確保対策を講じている。
具体的には、全県的な組織として県の副知事や各市町村の助役などをメンバーとする「神奈川県地方税収対策推進協議会」を平成8年7月に設立し、県税事務所を単位とした「徴収対策連絡協議会」を市町村とともに設置し、合同滞納整理や共同公売等の具体的な徴収対策への取組みはじめ、税務職員の資質向上を図るための研修会などを実施している。
合同滞納整理では、地域に密着した市町村が単独では踏み込みにくい事案などで成果をあげており、共同公売についても、集中化による事務負担軽減もさることながら、電話加入権などでは件数がまとまるため公売参加者が多くなり、結果的に落札価格が高くなるといった効果も報告されている。