この特例市制度は、市町村への権限委譲を推進する観点から、行政ニーズが集中し事務処理に必要とされる専門的知識・技術を備えた組織を整備することが可能と思われる市町村に対し、ある程度の事務をまとめて委譲するための制度として、人口20万以上の市について創設が検討されているものである(資料4)。
人口20万以上の都市は、平成9年度末現在で103市あり、東京特別区を合わせるとそこに居住する人口は、5千8百万人余で我が国の総人口の約半分に及ぶ。
一般的に人口規模の大きな都市は、税源も豊かな傾向があり、平成9年度決算において歳入総額に占める地方税の割合が4割以上の団体数を見ると、市町村全体では16.6%に過ぎないのに対し、人口20万以上の都市では80.7%にのぼっている(資料5)。
特例市の基準となる人口20万以上の都市について、その歳入構造をみると、歳入に占める地方交付税の割合は6.1%に過ぎず、全市町村の15.8%、人口20万未満の市町村の24.9%に比べて、かなり低い割合となっている。一方で、人口20万以上の都市における税収は歳入総額の46.0%を占め、人口20万未満の市町村に比べて法人住民税、都市計画税の割合が高く、事業所税の税収も上がっている(資料6)。
このように特例市の基準となる人口20万以上の都市においては、地方交付税への依存度が全体として小さく、財政力指数が0.9以上の団体が約3分の2を占めている(資料7)。これは、地方交付税の基準財政収入額(標準的な税収入の75%に地方譲与税等を加えた額)が基準財政需要額の9割以上に達する都市が約3分の2を占めることを意味し、一定の税源充実を図ることによって自立的な財政運営が可能になる団体が、人口20万以上の都市には数多く存在すると考えられる。
今後は、中核市、特例市といった制度を活用し、地方団体への権限委譲を積極的に進めていくとともに、自らの税収で自立した財政運営を行える地方団体ができる限り多くなるような税源の充実確保に向けた方策についても検討していく必要があると考えられる。