XIII 「福岡市における公共投資の現状と課題」
福岡市総務企画局企画調整部
企画課長 谷山昭
1. はじめに
福岡市は、昭和63年に策定した総合計画に「海に開かれたアジアの交流拠点都市づくり」という理念を掲げ、これまで「海」と「アジア」をコンセプトに、空港、港湾、高速道路といった交流基盤の整備を進めるとともに、ウォーターフロント施設をはじめとする海に開かれたまちづくりを推進してきたところである。さらに、下水道や住宅、公園、文化・スポーツ施設など市民の生活基盤整備についても積極的に推進してきた。このようなまちづくりは一定の成果をみせており、自然と都市が調和し、時代の最先端と歴史が融合した魅力あるまちとしての今日が築きあげられてきたところである。
しかしながら、福岡市が、九州における地方中枢都市として、重要な役割を担っている一方で、近年の急激な都市化の進展は、慢性的な交通渋滞や都心部の居住人口の減少、大気・水質等の都市環境の悪化などの都市問題を顕在化させるにいたっている。このため、都市高速道路や地下鉄3号線などの交通基盤整備、バランスのとれた多核的な都市拠点の整備など、本市の将来的な課題に積極的に取り組んでいく必要がある。
また、急速な少子高齢化の進行、家族の小規模化、社会保障給付費の増加、介護保険制度の導入をはじめとする社会保障制度の改革など本市を取り巻く環境は大きく変遷しつつある。さらに、国内総生産のマイナス成長など低迷する国内経済状況は、本市の財政にも大きな影響を与えており、厳しい財政運営を余儀なくされている。これらの社会経済構造の変化や来たるべき分権型社会に、的確に対応するためには、市民の視点に立った、簡素で効率的な行財政システムを確立し、貴重な財源を社会資本や生活資本の整備に効率的・効果的に投資していくことが求められている。
本稿では、上記のように、時代の潮流が大きく転換する中・大都市における社会資本整備の現状と課題に関し、本市における取り組みについて代表的な事例をいくつか紹介しながら述べさせていただ<。