VII 既存公共資本の活用策
名古屋市総務局企画課長
山田 雅雄
1. 公共投資の現状と新たな社会資本整備
現在、我が国を取り巻く社会経済状況は大きく変わりつつある。少子化とともに進行する超高齢化社会の到来、地球規模での経済活動をはじめとするグローバル化・ボーダーレス化の進展と地球環境問題など、従来とは異なった変化が顕在化してきている。
本市では昭和52年に議決された名古屋市基本構想の理念に基づいて、市政の総合的・計画的な推進を図るため、昭和55年に名古屋市基本計画を、引続き昭和63年には名古屋市新基本計画を策定した。現行の名古屋市新基本計画は目標年度を2000年においており、中間年次で計画実施状況の点検をすることとしていた。そのため平成7年には名古屋市新世紀研究会を設置し、計画の点検とあわせて激しい時代の流れを研究することとなった。
具体的には、名古屋新世紀研究会は、「高齢化・少子化への対応」、「ゆとり・豊かさ志向への対応」、「国際・広域交流の進展への対応」、「地球環境問題などへの対応」、「産業の高度化と情報通信の進展への対応」の時代的な5つの主要な社会潮流の変化と行政施策の方向性について検討を行ったのである。
こうした検討の中で、社会資本整備について着目してみると、とくに近年においては、国内経済の停滞などにより市の財政状況は現在より厳しくなることが予想される中で、住宅・道路など都市基盤は相当程度整備できたとはいえ、高齢化に対応した福祉施設や国際・広域交流を支える交通・情報基盤など新規の公共資本整備が望まれる方で、今までに建設してきた施設の改築更新も、その必要性が増大することが予測されている。
また公共投資による資本整備の他に、公共事業による住宅供給の見直しなど新たな住宅政策を例とする民間による社会資本整備やPFIなど民間ノウハウや資金力を活用した公共資本整備など、官民の役割分担に基づく新たな都市行政運営も課題となっている。
施設の改築更新についていえば、本市における公共施設の延床面積は約820万平方メートルにのぼっており(表-1参照)、その建て替えの時期は21世紀前半に一斉に訪れることになると予測している。床面積からみると、公共施設のうちとりわけ学校、住宅のシェアが大きいところに特徴がある。またこれらの改築更新需要とともに、施設の維持管理に要する費用も増大することが予想される。
今後は、先に述べた高齢化に対応した福祉施設や交流・情報などの残された基盤の整備計画を策定するとともに、官民の役割分担にもとづく民間参加による社会資本整備手法の検討、あるいは既存公共資本の改築更新需要とともに維持管理の課題を整理することにより、成熟社会における将来を見通した社会資本整備のあり方を明確にする必要がある。