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おわりに

 

川崎市における余裕教室の転用を事例としてとりあげ、新たな時代における施設整備の可能性を探ってきた。それは、ひとり川崎市だけの課題ではなく、行政目的別に市民利用施設を作ってきた施策自体の改変を促すものである。教育施策も地域社会と無縁のものではない。余裕教室の転用により学校の中に新たな風が吹き込むことは、学校教育の改革(教育の社会化)、学習環境の整備(社会の教育化)をもたらすこととなる。また、老人いこいの家での新たな動きは地域福祉コミュニティの創造につながっていく。市民による地域社会の諸課題を解決・処理していく能動的な動き、それらを実現させるためにも、行政と市民、市民と市民の間にあるさまざまな意見の調整が必要である。そしてそのことを楽しいと感じる自治体職員の存在が必要となる。

 

注1 菊池美代志・江上渉、「コミュニティの組織と施設」多賀出版(1998年)参照

「コミュニティ」には理想的概念(国民生活審議会調査部会コミュニティ問題小委員会報告、1969年に代表されるもの)、現実的概念(地域での人々の共同の営み)、実践的概念(理想と現実の架け橋となるような活動目標などを含むもの)の三種類のとらえ方があるとする?

注2 秋元政三、「コミュニティ施設その管理」、西尾勝編「21世紀の地方自治戦略10」、(1993年)参照

注3 三鷹市「みたかのコミュニティ〜コミュニティ活動と二一世紀のまちづくり」(1996年)参照

注4 鎌田慧「三鷹コミュニティ運動の理念と現実」世界(1995年8月)参照

注5 昨年、12月、「麻生区虹が丘小学校コミュニティルーム」がオープンした。開設に至るまで、夜間、土日を中心に、地元の市民団体、町内会、PTAとの協議が真摯に繰り返された。

注6 川崎市生涯学習推進基本計画(1993年)参照

注7 島田修一「生涯学習の新たな地平」、国土社(1995年)参照

ユネスコの「学習権宣言」、冒頭の噛(1985年)は「学ぶ」とは何かを示している。「学習権とは、読み書きの権利であり、問い続け、深く考える権利であり、想像し創造する権利であり、自分自身の世界を読み取り、歴史をつづる権利であり、あらゆる教育の手だてを得る権利であり、個人的・集団的力量を発達させる権利である。」

注8 上杉孝實「地域社会教育の展開・204頁」、松籟社、(1993年)

注9 松下圭一「社会教育の終焉」(筑摩書房、昭和六一年)

 

 

 

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