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このような自治体においては、コミュニティ醸成のための施策をどのように構築すべきだろうか。それは三鷹市などの先駆事例に学びながらも借り物でなく、これまでの施設整備の歴史のうえに立った新たな施策の展開である。つまり、目的別に設置した施設を、それぞれの機能を見直し、市民合意のもと機能の改変を行っていくことである。小学校、中学校区といった一定の地域ごとに、市民利用施設間のネットワークを構築することである。

 

(1) 社会教育施設とコミュニティ施設との連携

 

川崎市はこれまで、市民館、市民館分館の整備を行い、各地区ごと社会教育主事による各種講座などを行ってきた。社会教育施設と余裕教室の転用によってうまれたコミュニティ施設とはどう関連づけがされるだろうか。

社会教育施設の目的は市民の学習活動の支援であり、市民みずからが教育の主人公となることの援助である。新しく生まれたコミュニティ施設が存在することにより、市民自身が自主的に学び活動する場と、それを支援する社会教育施設のネットワークによる新たな関連性と可能性が組み立てられることになる。すなわち、コミュニティ施設は単なる貸し館ではなく、地域に密着した施設として市民が自由に管理運営を行うものであり、地域活動の拠点となるものである。社会教育施設は、市民の利用要望や相談などに応じるとともに、情報提供などの支援機能を果たすことになる。そして、これらの支援機能がコミュニティ醸成という目的にふさわしいものであるためには、社会教育施設、そしてそれに携わる者は、「市民の市民による市民のための生涯学習(注6)」の支援という自らの存在理由を確認しなくてはならない。

社会教育は「何に向けての学びかの問いに答えるもの(注7)」であり、社会教育施設で行われる「各種事業が生活課題への取り組みを重視してきたか、最も切実な人々の要求に根ざしていたか、民主主義への実質化についての認識、疎外の実態とその原因、歴史学習や人権教育など、現実にある問題状況に何を語ろうとしているか(注8)」が常に問われることとなる。社会教育施設とコミュニティ施設、両施設の関連性の中で市民の自由な学習活動が完成する。

かつて松下圭一氏は「社会教育の終焉(注9)」の中で、都市型社会への移行に伴い社会教育行政の教化課題は市民運動、消費革命にとってかわられたとし、「教育なき学習」を中核にすえた市民文化論を展開している。また、デモクラシーの成熟とテクノロジーの発展により、教化型の社会教育はその存在理由を失ったと帰結する。「教育なき学習」という松下圭一氏の提起されたことについて、社会教育側からの回答は、(注6、注7、注8)の著者が述べるところにある。すなわち、社会教育自身が社会教育の存在意義をかけて、「何に向けての学びか」、その意味を常に問うことだと思う。

 

 

 

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