II 札幌市における公共投資の事例
〜長期的展望に基づく新たな社会資本整備〜
札幌市企画調整局企画部企画課長
坂上 崇男
はじめに
札幌市は、北海道開拓の拠点として創建されて以来、わずか1世紀余りで人口180万人を擁する大都市へと急成長を遂げた。特に、昭和30年代からは、高度経済成長による全国的な人口の都市集中傾向と呼応して、人口規模が急激に膨張し、昭和45年には百万都市の仲間入りをした。その後、出生率の低下に伴う出生数の減少などの影響から、人口増加の傾向は鈍ったものの、人口は依然として増加を続けている。
この間、札幌市では、「北方の風土に即した快適な生活環境と高度な都市機能をもった都市づくり」を目指して、立ち後れの著しかった都市基盤を計画的・重点的に整備し、今日では、市内における道路舗装率や上下水道等の社会資本の普及率は、ほぼ100%となっている。
一方、社会・経済の成熟化は、市民の多様な価値観の中で、個性的なライフスタイルや質の高い生活環境を求める志向を強めており、他方、人口、環境、食料問題など幅広い分野にわたる問題が地球規模で深刻化している。
市町村レベルにおいても、近年は、スポーツ、芸術・文化などの分野でより質の高いものが市民から求められ、行政にも積極的な役割が期待されるとともに、清掃行政のように従来のような単に排出されたごみを処理する役割を超えて、資源保護、環境保全を図るため、ごみの発生抑制やリサイクルの促進を図る施策や施設の整備が求められるようになるなど、新たな取り組みが必要とな.ってきている。
この事例報告では、札幌市が昨年6月に建設に着手した「札幌ドーム(仮称)」と、平成12年度末にはすべての施設が稼動する予定の「札幌市リサイクル団地」を、このような新しい社会資本整備の取り組み例として、紹介したいと思う。