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別添B:リスクと不確実性1

 

概要

■リスク分析は、楽観主義の影響排除、変動要因の計量化と価値評価、重要な非可逆性の評価を目的とすべきである。

■コスト効果を出す場合には常に、リスクとその影響を低減化すべきである。その方法としては、たとえばパイロット・プロジェクト、追跡調査、弾力的または標準設計、最も効果的に処理できる場所へのリスク移転などを採用する。

■リスク表示技法として最も広く採用されている最も実効的な方法は、費用と便益に対する条件設定の影響を示す感応度分析である。こうした感応度分析を全面的に採用すべきである。さまざまな結果を総合的に検討する学問分野では、リスクと選択肢に関する新しい考え方や判定結果に対するフィードバックを行うことが多い。

■その他のリスク分析技法としては、シナリオ計画法やモンテカルロ分析法などがあるが、適切な場合にはそうした技法も採用できる。一般的に、中央政府の事前評価にリスクを導入する方法としては、割引率の調整は適切ではない。各種費用の流れを比較する場合や割引率が高いほどリスクの高い選択肢に有利になる場合は、特にそうである。

 

リスクとは?

1. リスクとは、2つ以上の結果が生ずる可能性である。その理由としては、たとえば建設費や運用費が敷地条件、気象条件、新技術の成功度に左右されること、プロジェクト結果に対する需要が将来の不確定な所得に左右されること、将来の人件費や燃料費、消費者の好みの変化、他の供給業者との競争などが不確実要因を伴っていること、あるいはその他多くの理由が考えられる。

 

2. 日常的な用語法では、しばしばリスクと不確実性を区別し、何かが悪くなる可能性をリスクと言い、何らかの行動方針の結果がはっきりわからないとか疑問視される場合を不確実性と言っている。本指針全体を通して、「リスク」という用語をその両方の意味で使用している2

 

3. リスク分析においては、それぞれ異なる確率を考慮に入れ、あらゆる予測結果の平均を「期待」結果として示すのが通例である。この期待結果は「平均」結果とか「不偏」結果とも呼ばれるが、一般的に予定結果や最有望結果とも異なる。最有望結果とは、発生確率が最も高い結果である。(「期待」結果は、下記の例1で説明するように「最有望」結果よりも悪化する傾向がある)。

 

1 本別添では、査定におけるリスクの扱い方に関する指針を提示する。ただし、プロジェクト管理や契約形態に左右されるような、プロジェクト実施及び運用中のリスクの扱い方は除外する。また、民間融資プロジェクトにおける契約交渉特有のリスク移転問題や契約交渉の中心となるリスク移転問題も扱わない。その種のリスク移転については、別添Dにおいて概説する他、別の手引書においてさらに詳細に検討する。本別添では、公共部門の管理範囲内にあるプロジェクトやプログラムの評価におけるリスクの扱い方について述べる。

2 リスクと不確実性をはっきり区別する場合もある。その場合には、「リスク」は評価可能で、既知の確率のある状況を指し、「不確実性」は確率が未知の状況を指す。実際上、こうした区別を明確に行える場合は滅多にない。特定の事象に対しては何らかの確率を指定できるだろうが、絶対に確実な確率なぞ滅多にわからない。他方、発生の可能性をまったく判断できないほど不確定な事象もほとんどない。しかも、既知の確率の精度に応じてリスク分析技法も異なってくる。

 

 

 

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