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費用便益分析

 

機会費用

4.12 ほとんどの商品やサービスには代替用途がある。したがって、こうした商品やサービスのコストは、適用可能な最適用途におけるその総価値(つまり機会費用)で算定すべきである。その手数料や使用料の設定については、第4.34において検討する。

 

4.13 一般的に、機会費用には現行市場価格を反映させている。家庭や企業が自ら支払う費用と独自の好みを熟知しており、市場動向に応じてできるだけ有利な用途に資金を注ぎ込もうとする強い動機を持っているからである。それゆえ、たとえば国内契約者による見積り価格が輸入品の価格より高い場合は、その差額が輸入による経済的国益を最もよく表わしている。発展途上諸国でよく見られるように、市場が未発達の場合には、通常もっと幅広い潜在価格が投資の事前評価に採用される。しかし、国際貿易や雇用をめぐるマクロ経済的論議に基づいて特定された英国経済の潜在価格は、英国大蔵省による特定の指針がない限り使用すべきではない。

 

4.14 機会費用が生まれるのは、プロジェクトが現金支払いを伴わない場合である。その一例としては、評価される団体がすでに所有している設備や土地の固定化があろう。もう一つは歴史的リースの市場価値であろう。

 

残存価値

4.15 何らかの事前評価で資産の予想耐用期間を扱う場合でも、団体内部で代替的な用途や中古市場において、あるいはスクラップとして、その資産がまだ何らかの残存価値を有していることもある。評価結果がそうした残存価値に関する条件設定に左右される場合には、事前評価では常にそうした残存価値を記録し、それを明確化すべきである。残存価値については、第4.59項及び別添Fにおいてさらに詳しく述べる。

 

埋没費用

4.16 事前評価においては、商品やサービスに対する支払いずみの費用やすでに約束した変更不能の費用を無視すべきである。こうした費用は「埋没費用」となる。問題となるのは、まだ決定が下されていない費用である。しかし、こうした費用には、すでに支払ずみの資産を継続して固定化する機会費用も含まれる。したがって、土地、建物、機械といった資産がすでに省庁の所有物となっている場合は、そうした資産に対する将来の利用費もその評価に加えるべきである。というのは、プロジェクトが停止されれば、その資産が売却されるか、他の用途に利用される可能性もあるからである。

 

容易に評価できない費用と便益

4.17 ほぼすべての事前評価では、市場価値がなくても費用と便益を重視する。こうした費用と便益に対しても明確な価値を設定でき、特定の結果に対する支払い意欲(WTP = willing to pay for)や受入れ意欲(WTA = willing to accept)を示す価値評価技法がすでに数種開発されている。こうした評価技法は、偶発的評価法(CVM = contingent valuation methodology)のように、ヘドニック(快楽)価格1や賃金格差により示される「顕示的選好」や、「明示的選好」に基づいたものである。

 

1 ヘドニック価格法では、住宅価格に対する道路騒音や見苦しい景観の影響といった外的な非市場的影響により市場価格がどんな影響を受けるかを調べる。

 

 

 

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