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新しいコミュニティづくりの試み

―小学校区単位の緩やかな組織―

そのような傾向の中、ふるさと創世事業をきっかけに多目的な活用をめざした基金が設置され、準備期間を経た後、参考文献や先進事例を指針に平成4年度より“三和町コミュニティ推薦事業”をスタートしました。

ここでは、旧来の意識とのギャップがトラブルの要因であるととらえ、旧村、旧組織の枠組みとは違った新しい組織体づくりを目指し、コミュニティエリアには小学校区をピックアップして行われましたが、この区割りが成功の要因の一つでありました。

事業の推進にあたっては、まず計画書づくりから行われ、行政側のコミュニティ推進計画策定作業と併せ、住民側でも小学校区単位で行政区、PTA、婦人団体、老人会等の既存団体の長に本事業の主旨を理解していただき、住民主体での話し合い、行動計画づくりが半年をかけて行われました。その支援策としては1学区に対し1人の職員が事務的作業の支援者として参加した以外は、僅かばかりの会議費用の用意しかありませんでした。

 

実現された計画の第1歩!

―計画実践団体が住民主導で設立―

学区行動計画が策定された後、今度は行政側からではなく計画づくりに参加した住民の中から設立に向けての声があがりました。そして、平成5年5月に八俣小学校区の活動団体「八俣ふきの芽会」が最初に設立され、その後、1月に、1団体のぺ一スで各学区に設立されていきます。

設立準備において各団体とも夜毎話し合いを設け、役員や組織構成、さらにはユニークな会名までも考え出し、それぞれが違ったカラーになりました。また、役員の人選も、実際に地域のことを考え、地域を変えていこうとする情熱と行動力がある人ということで、40〜50代までの働き盛りの方が役員に選ばれるケースが多く、必然的に会議は仕事の後、夜ということになります。団体によっては設立会議の一週間前は毎日準備会を開き、時には夜中まで及ぶこともありましたが、その中から、リーダーが自然と生まれ、団体と共に育っていきました。

 

ユニークネーミングの団体・ミニコミ紙名

 

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“ふれあいの場”づくりが第一段階

最初の活動はまず会の存在を住民のみんなに知ってもらうことと考え、各団体とも学区全体を巻き込んだイベントの開催とミニコミ紙を使っての広報活動でした。

先程触れた「八俣ふきの芽会」の例でいえば、地域のみんなが何かを求めているのかを探るため、たくさんの人との話し合いの中で見えてきたのは、昔はあちこちの神社などで行われていた盆踊りでした。「自分たちが子供の頃に体験した盆踊りがいつのまにかなくなってしまった」「今の子供たちにも夏の思い出として経験させたい」こうした声を拾い上げ、地域の中心にある公園にみんなでやぐらを組み、提灯をかき集め、資金かせぎのために自分たちで模擬店を開くなど短い準備期間で様々な行動を起こし、当日は2000人もが集まったイベント「ラブユーふきの芽まつり」を成功させ、踊りの輪も三重にも四重にもなっていました。

 

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ラブユーふきの芽まつり

 

更にみんなを盛り上げたのは、オリジナルの音頭まで作り上げ、振り付けも地元の踊りの先生の協力でつくられたことです。特に、振り付けを紹介するために各地の公民館で練習会を設けたことで、高い参加意識を醸成することができました。

三和町で最初に行われたこのコミュニティ団体のイベントに要した経費は約70万円。その内、町から助成された金額は10万円でしかなく、「金はなくともなんとかなる、必要ならば生み出せばよい」という発想が芽生えました。

この後、他の団体でも子供たちの音楽会をメインにしたイベントや、レクリェーション性の強いスポーツ大会などが各地で開催されましたが、次第に盆踊り開催の声が高まり、いつしか全部の団体で盆踊り中心のおまつりが開催されるようになりました。中には、花火大会まで行う団体もあらわれ、「大きな川も湖のないこの町で花火があがるなんて想像もできなかった、感動した」という声があちこちで聞かれました。

 

 

 

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