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コミュニティ活動の課題

コミュニティ活動の課題について、倉沢教授は、自発的にやりたい人がやりたいことをやるという側面を生かしながら、必要な領域で必要な活動をしてもらう仕掛けを作ることが一番の課題とされ、神代氏は、自らの体験から「地域を限定しないと心のきずなをつなぐのに遠すぎてしまう。地域を限定して人間同士のきずなを築いていくことがこれからの社会に求められる」と提言されました。

また、鈴木氏は、義務感からではなく、自分たちの持っているものを地域の中に自然に出していけるような雰囲気づくりを役員がしていくことの必要性、橋立氏は、地域の将来をになう若い人とか女性の意見、現状を改革しようという意見を反映させるために、伝統的な地縁組織を一度解体して考えること、また、既存の組織も脱皮して考えなくてはならないこと、山口氏は、これからのボランティア活動は相互扶助であり、かつ専門的であることが必要なので、特殊な専門性を持ち、かつ志を持った人たちを見つけていくことが大事であることを指摘されました。

 

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行政への期待

川島氏は、コミュニティに関して、行政はあくまでもお手伝いという立場をとることが大切で、住民が自ら考えていくための情報公開を行ったり、財政状況とかその地区の全体における行政的位置付けとかを説明(アカウンタビリティ)して、住民の意欲をバックアップしていくことが一番重要であるとされ、山口氏も、市民がより効率的なボランティア活動を開発したり、行政と共催で何かを実施したりできるように行政が積極的に情報公開することを希望されました。

橋立氏は、行政の意識が大きく変わらないとなかなか市民の力が生きてこないし、パートナーシップも組めないことを指摘し、行政に住民個人がほんとにすごい力を持っているんだと気付くことを期待されました。また、倉沢教授は、「行政の知恵の出し方が変な方向に向かっているのではないか。もっと多様な人間が多様なニーズを持って生活していることを考えるべきで、住民にここであなた方はいったい何をしたいのかということをきちんと議論してもらうことが大切である」とされました。

 

21世紀のコミュニティ活動と地域ボランティアの役割

山口氏は、市民自らが地域社会にある問題を調査して、その解決方法を編み出し、こういう予算でできるのだからというように議会をバックアップできるようになることが21世紀の課題とされ、橋立氏も「地方分権の行き着くところは市民分権、市民主権。参加者の個性とか能力とかが生きる活動にしてほしい。自分たちの活動が自分たちの地域を高めるか、低めてしまうか、そういうところまで考えなくてはならない時代」とされました。

鈴木氏は、豊かさの中で心の充実を求めるとともに、自分たちの地域をどうしていきたいのかということについて高いレベルでのビジョンを持つこと、神代氏は「地域を愛する心が無ければ地域づくりが言葉に終わってしまう。地方公務員は地域に住まわせる必要がある。また、職場と住居が近くになるような住宅政策をとり、地元小売店、商店街を大切にし、人と人との心のつながりを作っていかなければ地域社会の崩壊が続いていくだけ」と提言され、倉沢教授も、学校の地域における重要性を指摘するとともに、少なくても小学校の教頭は校区内に住まわせることが必要だとされました。また、教授は、住民は使える時間という資源、専門能力という資源など非常に多様な資源を様々に持っているので、行政はこうした資源をコーディーネートし、また、サポートしていくことが重要と指摘されました。

 

 

 

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