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では、それに向けてどうずればよいのか。例えば、高齢者に弁当を配るにしても、給食センターで作ったお弁当を町内会やボランティアのスポットに届け、ボランティアや近所の奥さんが一言かけて配る。こうすれば同じお弁当でも心が通い、味は違ってくる。心の通い合いが非常に重要であると言うことを1つ言いたい。

日本人、例えば東京に住んでいる人は、地域社会に大変無関心で、無気力で無責任でどうしょうもないという声が聞かれるが、調べてみると恵まれない人たちのために、あるいは地域の環境をよくするために何かの役に立ちたい、そういう気持のある人が9割くらいいる。ところが、その大部分の人は、町内会や婦人会はどうも古くさくて嫌だと言う。これは意欲はあっても、仲間同士お互いに信頼関係があって、一緒にやろうということができる中間集団が少ないということだ。どうやったらこういう種類の問題に取り組む集団活動ができるのか。これが最大の関心事であり、日本社会にとっても非常に大きな問題であると考えている。

数十年前、静清バイパスのこの調査に入ったことがあるが、協力するにせよ、反対するにせよ、そのリーダーの人たちに会ったら、非常に似通ったマージナルマン(marginalman)タイプの人たちだった。外地で生活した経験があるとか、東京や大阪の生活の経験があるとか、ほかに比較する社会があって、自分の今住んでいる社会と比べて、これよくないんじゃないかと考える力が出る人、こういう人々が非常に知恵を出し、かつエネルギーを持って活動する。これからのコミュニティの担い手として一番期待できるのはこういう人たちではないかと思う。

最後に問題解決型の活動のキーワードは「遊び心」であり、また、大事なことは、知恵である。素晴らしい活動をしている集団を見ると、大抵は新米の人でも受け入れて、その人たちの知恵を活用して何かをしている。町内会、自治会ではだめだという言い方をしたけれども、そういう形に変わってくれば、町内会が生き生きとした中心になる条件もまたあるとかんがえている。

 

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パネルディスカッション

 

パネルディスカッション

〜コミュニティ活動の今後と地域ボランティアの役割について〜

パネルディスカッションでは、まず現在のコミュニティ活動をどう見ているかについて各パネリストからの発言があり、それらを踏まえて1]地域ボランティアとコミュニティ活動の関わりとその課題、2]今後のコミュニティ活動の発展のために行政に何が期待されるか、3]21世紀のコミュニティ活動と地域ボランティアの役割の3点に焦点を当てて議論が進められました。

 

コミュニティ活動の現状について

まず、川島氏から「分権の中では自己決定、自己判断、自立ということが一番重要で、コミュニティと行政との上下関係を絶ち切っていくことが一番大切な理念である」との提言があり、倉沢教授からは、教授自らの提案で実現した東京都のコミュニティ銭湯の紹介、神代氏からは、老いや死というものを支えうる地域社会づくりの紹介とともに、「ボランティア活動はその地域に住む人たちによるその地域の人たちのためのものでなければならない」との提言がありました。

また、鈴木氏からは、コミュニティが地域にもとめられる機能を作りあげていくことが重要であること、橋立氏からは、地区にまちづくり委員会を作って、行政の持っている事業予算の一部を委ねる大井川町のまちづくり条例の紹介とともに、地域間格差をあまり気にせず頑張っている地域に行政が支援を行うことが必要であること、山口氏からはNPO活動の紹介とともに、「自分たちの地域のために知恵だけでなくお金も出そうよという寄付の文化を築いていくことが必要」との提言がありました。

 

 

 

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