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米沢市では、上杉鷹山の「国家・人民は私すべきものにはこれ無く、藩主は国家、人民のためにある」との「伝国の辞」を職員に伝えるとともに、平成13年には上杉鷹山生誕250年を記念して、上杉の歴史と文化を中心とした博物館の建設を進めている。

ところで、その米沢市が昭和50年代初めに財政再建団体となった。当時広大な中核工業団地を造成中であったが、これの企業立地についていささか懸念が示されていた。

20数年を経た現代、当該企業団地は、立地企業56社、従業員4500人余、製品出荷額1400億円に及ぶ一大産業団地となり、地域社会の活力増大、雇用の場の確保に大きな役割を果たしている。

明治43年創立の米沢工業高等専門学校と、これを引き継ぐ大学工学部の万余に及ぶ卒業生の全国ネットワークが企業誘致の原動力となったと聞いている。

一方、基地問題の解決と地域経済の活性化を最重要課題として掲げる沖縄においては、復帰後26年余の間、三次にわたる沖縄振興開発計画を作成し、その目標「自立的発展とわが国経済社会への寄与」とを掲げ、振興策の柱の一つとして、南の国際交流拠点の形成を目指している。

この具体的プロジェクトの一つとして、沖縄本島中部に位置する中城湾四百ヘクタールを埋め立て、ここに東南アジアなど世界と結ぶ大流通港湾と流通加工団地の形成途上にある。

この地に予定されている「特別自由貿易地域」への内外の企業誘致に活用できる人的ネットワークにいかなるものがあるか。

琉球大学など地元の大学は昭和20年代後半以降に初めて卒業生を送り出しており、これまで沖縄の振興開発に果たした役割は大きなものがあるが、全国的人的ネットワークの形成については今後の成長が期待される段階である。

沖縄県にある竹富町は、島々が亜熱帯の原生林に覆われている環境を活かし、西表島などを中心に長期滞在型リゾートの形成を図るべく(財)地方自治研究機構の協力を得て作業を進めている。この計画では、沖縄本島北部にある公設民営の名桜大学観光産業学科が、これの基礎調査を担当しており、数十名の学生が数次にわたり現地調査などに参加し、プランの作成に協力している。学生と地域住民の交流を通じ、地域の活性化、学生の具体的問題意識の形成、名桜大学への八重山地域からの入学志願者数の数倍増と、その諸効果の高さが指摘されている。起業家コースを設けた宮城大学、高知県立工大、会津大学などの公立大学、ないし公設民営大学が最近各地に設立されている。これの地域振興に及ぼす影響については、様々な視点から論じられているが、今後とも産・学・官それぞれの人材育成、三者をつなぐ人的ネットワークの形成、これの時間的、空間的な蓄積が地域振興に及ぼす影響は大きいものがあろう。

間もなく分権時代の幕が開く。

その時新しい時代の扉を開く重要な鍵の一つは、産・学・官にわたる人材の育成とそのネットワークの形成ではなかろうか。

 

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沖縄県西表島

 

 

 

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