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自治だより 平成11年3月号

(奇数月発行)

(通巻No.130)

 

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地方分権時代と人材ネットワーク

牧隆壽(全国町村議会議長会事務総長)

 

分権時代の足音が聞こえてくる。

現在開会中の通常国会には、機関委任事務制度の廃止や地方公共団体に対する新たなルールの創設などを内容とする五百本近い法律の一括改正法案が提出されると聞いている。

国から地方への権限委譲や国の関与の縮減などを通じ、国と地方とは、対等・協力の新たな関係が構築される。

この流れの中で、地方公共団体の果たすべき役割と責任はますます増大する。

一方、我が国は、少子・高齢化の進展、経済構造の変化など様々な分野において急激な構造変化を遂げている。これを反映して、生活基盤の整備、環境問題、総合的な地域福祉対策の推進など様々な分野において新たな住民ニーズが生起している。これらの要請に地域の総合的行政主体である地方公共団体は如何に迅速・的確に応えてゆくか。中央集権的行政システムから、地方分権的行政システムヘの変換は、各地方公共団体の行政遂行の成果を厳しく住民に問われることとなる。地域間競争において住民に高い評点をいただくための要素は何であろうか。各分野における住民ニーズは、いずれもそれぞれに政策優先度の高いものであろうが、地域の活力の増大、雇用の確保などをめざした地域産業の振興との課題は、農山漁村、都市など地域を問わずその実現が強く期待されている住民ニーズであろう。

長引く日本経済の不況の中で、地域経済の再生にかける思いは一段と強いものがあろう。

行政改革と地域経済の振興が話題となる時、先哲の教えとして示されるのが上杉鷹山の藩政改革と殖産振興の例である。

藤沢周平描く「漆の実のみのる国」より得た知識によれば、上杉鷹山行革の素晴らしさは、藩政上の諸々の冗費の削減もさることながら、漆百万本、桑百万本、楮百万本の植樹により、10年後藩の知行をも上回る収益を藩にもたらし、以後上杉藩に財政危機無しとの長期的展望を開き、大きな夢を示した点にあると思われる。加えて、人材育成のための学問所を再開し、興譲館と名付けた。

 

 

 

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