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ハーブによる新しいまちづくり

山崎袈裟盛(長野県池田町長)

 

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はじめに

池田町は長野県北西部、雄大な北アルプス連峰と大自然に恵まれた安曇野のほぼ中央に位置しており、池田町からの北アルプスと安曇野の景観は日本一と自負しているところです。また、童謡「てるてる坊主」の作詞者、浅原六朗の出身地で、ソウル・バルセロナ両オリンピックで活躍したマラソンの中山竹通選手のふるさとでもあります。人口は約1万900人、面積は約40平方キロメートルと小さな町で、全体の3分の2は山間地が占めています。

 

産業の発展経過

農業面では、当町の農業基盤は、西部の水田地帯と東部の桑園地帯に二分されており、歴史的には反収日本一を記録したこともあり、安曇野の米どころとして優良米の産地でありました。一方、製糸業も盛んで県内5指に入る製糸の町であり、さらにはタバコの栽培も盛んでした。近年は、カーネーションを中心とした花卉栽培も盛んになりましたが、伸び悩んでいます。

商業面では、かつては宿場町として、また製糸の町として栄えましたが、近年は近隣町村の大規模店舗の乱立、町内への大規模店舗進出により、従来からの小売店の閉店等により低迷しています。

工業面では、工場誘致・農村工業団地造成等により企業数・従業員数・製造品出荷額等は伸びていますが、町産業の中核をなしているのは、中小、下請企業です。

観光面も、かつてはほとんど皆無でありましたが、近年大峰高原白樺の森、相道寺焼、花菖蒲園、てるてる坊主の館、夢農場(ラベンダー園)、ハーブセンター等の施設及び自然環境や歴史的遺産探訪を中心に訪れる自然派志向の観光客が増えています。

 

ハーブ栽培のきっかけ

前述のとおり、かつては農業を中心として近隣からの出入りも多い活気ある町でしたが、その後の農業を取り巻く情勢の変化により養蚕業は斜陽の一途を辿り、また転作面積の割り当て消化や転作作物の振興を図ってきたが、米に代わる有利な作物が定着せず、養蚕においても価格の不安定性や農家の高齢化等により、遊休荒廃地や休耕田が増加、併せて農家も水田の基盤整備の進展・機械化等による合理化により製造業などの兼業化が進んできました。

このような背景を基に低迷している町産業の発展が叫ばれる中、昭和63年、町内のハーブ愛好家等によりハーブ栽培がブームとなり始め、町でも低迷している町産業の発展にハーブ栽培がまちづくりに活かせないか研究を行いました。

有識者等の助言による研究の結果、ハーブは薬用・料理用・装飾用・香料等その用途は極めて広く、西欧では古くから利用されておりヘルシーブーム・若い世代への人気・無農薬栽培が可能などの地球に優しいイメージの良さがあり、かつ、その市場性・将来性についての展望が確実視されたので、育苗・栽培・加工・出荷まで含めた町内一貫生産・販売の実現により、農家所得の向上を図ろうとする施策が具体的に検討され始めました。

 

 

 

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