○地方公共団体の行政体制の整備・確立
そこで、分権を受け入れる地方の行政体制の整備に関し、森田教授は、市町村合併、住民参加、そして地方議会の活性化について意見を述べられた。
まず、合併問題について、地方分権推進計画で都道府県がガイドラインを示すことが盛り込まれ、「前向きな方向で合併を考えていかなければならない雰囲気になっている」との認識を示されたうえで、「市町村の規模としてどのくらいが適切かは意見が分かれる。」が、「相当小規模な町村においては、特に財政事情も含めて行政のあり方を見直していかなければならない状況にだんだん陥っていくのではないか。」「住民サービス、行政運営上のコストを含めてどういうやり方が効率的なのかを考え、その一つとして合併もありうる気がする。」と発言された。
また、住民参加については、住民投票を含め「これならばうまくいくという仕組みがまだない。」が、地方議会については、「民意を行政の政策につなぐ一番中心的な役割を果たすべき」であり、機関委任事務制度が廃止され、「これからますます議会の役割は制度的にも拡大してくるし、実質的にも期待されている。」と議会の重要性を力説された。
○まとめ
終わりに、「責任という言葉は、追及という言葉が次に出てきて受け身に考えてしまう可能性があるが、そういうものではなく、積極的な責任、積極的に働きかけていくという発想が必要になってくる。」「積極的に問題に対応していく、制度に問題があるならその制度そのものを変えていくという対応がますます必要になってくる。」と述べて講演を締めくくられた。
パネルディスカッション〜個性あふれる分権型社会の創造に向けて
まず、コーディネーターの成田氏が、「地方分権はそれ自体が目的ではなく、地方が自主的に自分たちの問題を仕切っていく仕組みを作るための前提である。」「分権時代の幕開けに、厳しい財政状況に見舞われたのは天の与えた試練である」との意見を述べられた後、議論が始まった。
(1) 地方分権推進に向けた取組についての評価
溝口町長は、「機関委任事務制度が廃止され、対等協力の関係になるのは大きな意義があるが、財政が自立しないと本当の意味でのパートナー関係にはならない。」と発言された。続いて中尾氏は、「個々のかけ引きではなく、わが国の将来をどうするかという観点から議論してほしい。」との感想を述べられた。また、岩崎氏は、国から財源もつかずに権限が下りてくると困ると考えるのではなく、「市町村は何ができるか、できないものは県に、県がダメなら国に任せる」というように「自分たちのできることからやっていくという発想の転換こそが重要である。」と発言された。これについては、萩野氏も、「これからは自分たちがやりたいことについて選択の幅が広がると前向きにとらえるべきではないか。」と述べられた。
(2) 地方行政体制の整備
行財政改革について、中沖知事は、「住民と地方が主役である地域づくりをめざし、単に整理合理化を進めるだけではなく、改めることは改め、伸ばすものは伸ばすというメリハリある行財政改革を、職員の英知を集めるとともに、住民の参画をいただいて進めている。」と説明した。