はじめに
昨年11月26日、富山市において、地方分権の意義について住民に広くPRするとともに、分権型社会における地方の責任と役割を考える契機とするために、地方六団体、財団法人自治総合センターと共催で「地方分権推進フォーラム'98in富山」を開催した。
当日は、県内外から行政関係者、地方議会の議員、地域住民など多くの皆様のご参加をいただき、熱気あふれるすばらしいフォーラムとなった。
中沖豊富山県知事のあいさつの後、地方分権推進委員会参与の森田朗東京大学教授から「分権型社会と自治体の責任」という演題でお話を伺った。パネルディスカッションでは、地方分権推進委員会専門委員で地域づくり部会長の成田頼明横浜国立大学名誉教授をコーディネーターにお迎えし、パネリストには、岩崎美紀子筑波大学助教授、中尾哲雄富山経済同友会代表幹事、中沖知事、萩野聡富山大学教授、溝口進富山県町村会長(福野町長)が出席し、「個性あふれる分権型社会の創造に向けて」をテーマに、行政改革の進め方や広域行政のあり方等について、産・官・学それぞれの視点から活発な議論が交わされた。
基調講演〜分権型社会と自治体の責任
○第5次勧告
フォーラムのちょうど1週間前に第5次勧告が行われたが、このことについて森田教授は、「なかなか情勢が厳しかったが、最終的には何らかの形で合意を見いだすということであのような勧告になった。個人的にはもう少し何とかならなかったのかという思いもあるが、現時点ではやむを得ない。それでも、統合補助金の新設とか、国の直轄事業の基準を示したこととか、ある程度の前進が見られたと考えている。」と、地方分権推進委員会参与としての苦労談を交えながら感想を述べられた。
また、勧告の内容が当初の案よりも後退した背景として、地方財政の悪化等のほか、「4次までの勧告ほど地方自治体のサポートが得られなった」ことも挙げられた。明治維新、戦後改革に次ぐ第三の改革と言われている大事業にもかかわらず、仮に、分権を推進する体制の足並みの乱れがあったとしたら、我々としても反省しなければならない。
○自己責任
続いて本題に入り、森田教授は、まず、「地方財政の状況は大変厳しいが、数字で見るほど自治体の職員は危機感を持っていないような気がする。最後には、国が何とかしてくれるのではないかという期待感があるのではないか。しかし、それはだんだん難しくなってくる。自治体の自己責任、自己決定を実感を持って考えるべき時にきている。」と切り出された。
さらに、これまでは、「地方が独自性を発揮しようとしてもその余地が相当制限されざるを得なかった」が、4次までの勧告で、機関委任事務制度を廃止するなど国の地方公共団体に対する関与をなくすという方向が打ち出されたことにより、「地方自治体の側で、それぞれの考えに基づいてやったことが正しいと確信した場合には、それをきちっと議論していく姿勢がこれからは期待されてくるのではないか。」と述べられた。