○基調講演「森からの贈り物」続いて、以前TBSのアナウンサーとして活躍し、現在は青森大学教授のかたわらエッセイストとしても活躍中の見城美枝子さんに「森からの贈り物」と題して、基調講演を行っていただきました。
講演で、見城さんはまず現在の環境問題について
「私たちがそもそも環境問題というのを抱えてしまったというのはどういうことか。基本的なところを考えますと、動物として自然の中で暮らしていたら多分こういう問題は抱えなかったと思うんです。
人間があるときサルと分かれて、人間になった。その、人間になったのはどういう時かというと、2足歩行をして道具を手にしたときにサルと分かれたといいます。これは私の考えなんですが、人間がエネルギーを使うようになった時から他の動物とは違ってきたと考えます。やがて人間は社会を作りはじめ、そのエネルギーを使うことを覚え、使い始めたことがこの発展を呼んで、現在のような危機をもたらしたのだろうと思っているんです。」と持論を述べます。
そして、次に
「水の問題でも、とっても森が重要で『魚付き林』という言葉があります。カキの養殖をされている方がどうしてもカキの味が悪くなって、ご自分で何かおかしいと調べたら結局水が悪いということがわかったのです。海といっても、カキは陸の近くに住みますからこの水べりが悪いわけです。どうしたらいいのかと考えて、ずっと遠くを見てあの山に木を植えて、水をきれいにしなくてはと気付かれたそうです。そこで、漁師さんが組合で山に木を植えたんです。その結果、大きなカキが再び獲れるようになりました。ここのカキはプルンプルンしていて、獲ったまますぐ食べられるんですって。それで今も漁師さん達が木を植え続けているんです。
結局、木が植えられることによって山が豊かになって、そうすると伏流水がずっと保たれる。これは濾されていく浄水器と同じで、少しずつきれいになった水が海に流れていくようになります。カキの養殖ということで自分達は仕事のために海を汚す、水を汚す。しかし汚れると自分達も貧しくなるということで、結局木を植え山を守ることに気付き、それが今成功しているんですね。こういった例もありますように、いろんなところで木とのつながりがあると思います。」と森が環境保全に果たす役割の一つの例を取り上げるとともに、住まいの材料のうち木材がいかに人間の健康、省エネひいては環境のために優れているかを実例をあげながら強調します。
次に、人間が現在のような文化的で便利な生活を維持していくためには、膨大なエネルギーが必要であり、人間がどれだけ賛沢な生活をおくっているかについて
「私たちが動物と違ってどのくらい賛沢させてもらっているかがわかる数字もあります。動物が1日夜明けとともに目を覚まして、自然の中にあるものを探して食べて、それで水を飲んでまたどこかねぐらで寝る。そういうふうに暮らすことをCO2に換算して、これをまず1とします。人間は朝起きて、特に何もしないで昼暮らして夜寝るといっても、食事も生のまま食べられませんから煮炊きしますし、少しずつ余分にエネルギー」を使ってしまうわけです。ですから、人間は質素にとにかく夜明けとともに起きて、何とか煮炊きして最低限食べてどっかそのへんにして、それでまたどこかに寝る。最低限のこういう生活をやっても10なんだそうです。