地方分権推進フォーラムIN徳島'98
川村章二(徳島県企画調整部企画班長(新政策課題担当)
はじめに
去る9月14日に徳島市内において、地方分権の意義と今後の地方自治の在り方を考えるために、徳島県、地方六団体、財団法人自治総合センターの共催で「地方分権推進フォーラムIN徳島'98」を開催しました。
当日は、徳島県内はもとより、全国各地から600人を超える行政関係者、地方議会の議員の方々、県民の皆様の御参加をいただきました。
圓藤寿穂徳島県知事のあいさつの後、作家の童門冬二氏から「歴史に学ぶ地方分権」という演題で地方分権の意義や今後地方自治体や住民に求められることについて歴史の事例を交えながらお話を伺いました。続いて、圓藤知事も加わったパネルディスカッションでは、地方分権推進委員会の参与の森田朗東京大学教授をコーディネーターにお迎えし、パネリストとして佐藤淨・脇町長、近清政之輔・徳島商工会議所連合会副会頭、米田博・とくしま地域おこしチャレンジ運動推進員座長、木村陽子奈良女子大学助教授に御出席いただき「21世紀のまちづくりを考える」をテーマに、分権化時代における住民参加の問題や地方分権の主役である市町村の在り方などについて積極的な議論が展開されました。
以下「地方分権推進フォーラムIN徳島'98」の概要を報告します。
基調講演
―「歴史に学ぶ地方分権」―
基調講演で童門氏は、「地方公共団体が住民とともにまちづくりを行っていく目的は三つある。」とし、「一つ目は生き甲斐を感じる魅力作り。二つ目は生き甲斐だけでなく死に甲斐、ここに骨を埋めてもいいと感じるような魅力を作り、子孫に引き継いでいくこと。三つ目は他県の人が移り住みたくなるような魅力を作っていくことである。」と『まちづくり』の目標についての氏の考えを述べられました。
そして、これを満たす条件として、1]平和にくらせること、2]豊かにくらせること、3]平等にくらせること、4]正しくくらせること、5]自己向上(生涯学習)できること、6]パフォーマンスできることの六つを挙げられ、「ローカルマキシマムの実現を急ぐあまり、ナショナルミニマムの問題を忘れてしまってはならない。」とし、地方分権が推進されるからといって国の動向とまったく無縁な地方自治行政はあり得ず、政府のやるべきナショナルミニマムの仕事が実現されてはじめて地方自治体の仕事も完成するとして、今後、地方自治体や住民に求められることとして「グローバルにものを見ながら、ローカルに生きる。」ということを強調されました。
そして分権時代のまちづくりは、「公助・互助・自助という三つの助け合いがあってこそ初めて可能となる。税金によって提供される行政サービス(公助)以外に、地域・コミュニティにおける助け合い(互助)、自分にできることは自分ですること(自助)が求められる。従って、地方分権の推進のためには、住民に対するかなりの負担が必要となるとともに、住民と議会、そして首長をトップとする執行機関が立体的に手を組んでいかなければならない。」と住民、議会、行政のパートナーシップの重要性について述べられました。
最後に童門氏は、地方分権の実現ということは、「地域において新しい文明を生産していくことだ。地域がコミュニティアイデンティティを生んでいくことが、地方分権を実現していくことになる。」と述べて地方自治体の自覚を強く喚起され、講演を締めくくられました。