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パネルディスカッション

〜21世紀のまちづくりを考える〜

パネルディスカッションは、まずコーディネーターの森田教授が、地方分権推進委員会の4次までの勧告のねらいは「国と地方の関係を上下主従の関係から対等協力の関係に変え、地方行政の在り方を事細かく決めていた国の制度を改めて地方が自分達の考え方に従ってまちづくりができるようにすることであった。」と説明され、「今後は、制度改革を生かして地方がいかにして自分たち独自のまちづくりを行っていくのかが問われることになり、地方の体制づくり、能力向上が課題となる」と述べられ地方分権の推進力は今後地方自治体サイドに移っていることを問題提起された後議論が始まりました。

パネルディスカッションは、1]総論として今後の地方自治の課題、2]地域の主役である住民にどのようにまちづくりに参画してもらうか、3]まちづくりの担い手としての地方自治体の在り方について、という三つのセッションに分けて議論が進められました。

 

地方自治の課題

まず、木村助教授は「今後、政策決定のプロセス、供給主体の決定、政策評価の方法、監視体制、住民の権利保護の五つのポイントから行政運営を評価していくことが重要になってくる。」との見解を示されました。続いて米田座長は「現在、中山間地域では集落の崩壊の危機が訪れている。今後、行政は50年先のビジョンを持った上で、短期的対応方策と将来計画を地域住民に示し、行政と住民が互いに議論し未来に向かって行動していく必要性がある。」ことを訴えられました。

また近清副会頭は、いままでの自治システムを全国チェーンのレストランに例え、「本社のマニュアルどおりに全国の各レストランで同じ味付けをしていた状態から、お客の多様化した好みに対応するため各支店が地域の実情に応じたシステムに変えていく場合、各レストランの従業員の知識・技術・経験が劣っていては、料理は逆においしくなくなる。」として地方自治体の職員の自覚と奮起を促されました。圓藤知事と佐藤町長は、最近、地方交付税等の財政調整制度や地方に対する公共投資に批判があることを踏まえ、各地方自治体間で著しい財政力格差や社会資本のストックの格差が存在している現状からナショナルミニマムやシビルミニマムの確保のための方法について更に十分な議論が必要であることを地方の立場から強調しました。

 

住民参加について

住民参加については、米田座長は「行政へのお願い型、下請け型の住民活動から卒業して、住民が主役の地域づくりを目指さなければならない。」として、その前提条件として住民が行政と共通の情報を持って議論できるよう情報公開制度の確立が必要であるとしました。次に近清副会頭は、「現在行われようとしている中心市街地の活性化にしても現実に商店街の活性化と再編整備を行うには、総論も各論も賛成でなければ何もできない。」と指摘され、行政と住民がビジョンづくりの段階から徹底的に議論し、協力していくことが求められていると発言されました。佐藤町長は、町の長期計画や町おこしの具体的な方策を検討してもらっている100人委員会の活動から観光ボランティアガイド等の住民の具体的活動が生まれてきたことを紹介され、今後の介護保険の導入に当たっても、社会福祉協議会を中核にしてボランティア活動を軸として地域福祉の充実を図っていきたいとパートナーシップ型まちづくりの構想を述べられました。

一方、木村助教授は、「住民参加という言葉自体に住民を対等に見ていない行政の思い上がりの面がある。NPOの人たちで活発にまちづくりをしてきた人達を見ると、行政がほとんどタッチしてこなかったケースが多い。逆に行政をどの段階で参加させるかという、行政参加であった。」と指摘され、「自治体はややもすると優秀なNPOを嫌う面も見られるが、これからはいかに優秀なNPOを育て、自分のまちで活動してもらうかという考えでいかなければならない。」とNPOを通じた今後のまちづくりの重要性について意見を述べられました。最後に圓藤知事は、各パネラーの意見を踏まえ「住民参加の方法は大きく分けて二つある。

一つ目は政策決定プロセスヘの参加であり、二つ目はサービスを地域住民が担っていく参加の方法である。」とし、「政策決定プロセスヘの参加には、ワークショップ手法などの積極的な活用がますます重要になってくる。また、サービスを担っていく参加については、行政としてボランティアやNPOへの支援は、今後、地方自治が地域社会と結びついて、本当の意味での住民自治を確立するために必要な手続きである。」との考えを述べ、さらに、両者に共通の環境整備としで情報公開を徹底的に行い住民が行政とともに考えるシステム作りを行うこととアカウンタビリティーの確立が重要であるとの考えを示しました。

 

 

 

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