3. フランス
1] セレ村の小規模下水処理場
フランスでは、パリから南西約200キロメートルも離れたセレ村まで足を伸ばした。フランスの95県のうち、41番の県ロワール・エ・シェール県に属し、自動車耐久レースで有名なルマン市のすぐ東に位置する、人口261人の村である。ここでは、人口規模から、村と呼ぶこととするが、フランスでは日本で言うところの「市」、「町」、「村」の区別はなく、すべてが「コミューン」であること、その数も国内では36万以上もあり、うちその9割が人口2千人未満で、1万人以上は2%程度であることから、むしろセレ村は標準的な「コミューン」といえることには、念のため触れておきたい。
いわゆる下水道の普及率が81%(1994年)とされるフランスであるが、その農村部における非常に小規模な下水処理場の実態を見てみようというのが、この村を訪ねた理由であった。当処理場は、1987年に敷地4千m2に、建設費145千フラン(うち用地費5千フラン。1フランは約25円)を投じて、施設能力180人として完成した。民家から自然流下で場内の流入槽に入ってきた雨水、生活雑排水、し尿などの排水の全ては、ポンプ2台、処理池3池(深さ1m程度で、面積は順に1000、500、500m2)を使って、自然沈殿法により処理された後、隣接の幅2〜3mの小川に放流されている。
水質規制や検査などは我が国と比較するとかなり緩やかなようであり、維持管理についても、役場の作業員1人が、村の公園の清掃など他の仕事もしながら、処理場の草刈りをしたり、どぶネズミの駆除、沈殿した汚泥の処理をしたりしている程度である。
使用料金は、実際に施設を利用するかどうかに関わりなく、利用可能者に対して上水使用量1m3に4.5フランの下水処理税として半年ごとに徴収する形。
また、現在のところ処理人口は120人にとどまっているが、残りの141人については汲み取りにより対処されているとのことであった。
こうした施設はこの地方では、ちょうど1980年代からこうした村でも盛んに建設されるようになった。のどかな農村部、その地域の実情にあった簡便な施設整備と処理システム。とかく過大で華美とされる我が国の公共施設と比べた時、考えさせられることも多かった。
「外国人がこの村を調査で訪れたのは、これまでに一回きりで、それは村自慢の教会を対象にしていたものであったが、今回は下水処理場とは…。」
視察後、村民会館のような所で開いていただいた、立食形式のレセプションにおける女性村長(本職国立中学の会計係)のあいさつであった。「我々は、実は今日朝6時半にローマのホテルを立った。12時頃にパリに着いたが、凱旋門も、エッフェル塔も何も見ないで、ただ走りに走り、3時間以上かけて、やっとこの村にたどり着いた。先ほどは現場で大変丁寧な説明をいただき、また、こうした歓迎レセプションを設けていただくなど、本当に、はるばる日本から訪ねてきた、その甲斐があった。」
団を代表してこのようにお礼の挨拶をし、大いに国際親善を深めることができた。
我々一同にとって、セレ村は、特に印象に残る訪問地となった。
2] パリ市の都市再開発
最後に、パリ市では、市の北西部、有名な師走門の西の一画、ラ・デファンスの都市再開発区などを視察した。
終わりに
以上、紙面の関係もあって、極めて簡単な報告となりましたが、今回の調査は、我々参加者一同にとって大変実りの多いものとなりました。
このような機会を与えていただいた(財)自治総合センターをはじめ関係者の方々と、調査に際して大変お世話になった現地の方々に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。