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3]指摘された問題点を整理し、事態を調整したり、制度的な歯止めをかける段階になって行政は本来の力を発揮することができる。

4]運動的展開は、まちづくりに関わる人や組織の関心を広げたり耕したりするうえで効果がある。

5]多様な担い手が、独立性を確保しながら協働するという新しい地域糸縣載のあり方が問われる。

6]住民と行政の協働を円滑にするには、住民の活動に対する支援と、行政への支援のそれぞれ異なる支援が必要となる。

 

5 新しい協働組織が必要

また、湯布院町における個々の地域づくり運動のなかの担い手とその役割を整理すると、地域における合意形成上の今日的課題もわかってくる。

1]課題の広域化、大型化、複雑化によって、合意形成を必要とする担い手の範囲が地域を越えて拡大する。そこでは、積み上げてきた、きめ細かな地域ルールの適用手法が問われる。

2]問題解決期間の長期化によって、合意の内容や判断基準が変化することが多い。事態の変化に柔軟に対応しながら本筋を損なわない調整者としての行政の誠意やしたたかさが必要になる。

3]課題を解決するについて、事態を専門的、客観的に調査・分析・提案する専門家の参画が必要になり、そのための財源を確保したり、人的ネットワークを構築する中立的機関が必要になる。

4]問題の横断化、複合化によって、行政の既存の枠組みにとらわれていては対応しきれない場面が増えたため、「地球づくり型役所」の仕組みが必要になる。

5]行政の積極的情報公開がないと事態が混迷するので、情報公開が誠実に行われる仕組みが必要になる。

 

6 地域づくりの展開は多様だ

さまざまな主体が協働して新しい事態に取り組む方法も、湯布院町のケースから学びとることが出来る。運動的展開のタイプはいろいろあるが、この町の場合次の4つに整理できる。ひとつは開発阻止型と呼べるものだ。これは、提起された問題点に対して、仲介や調整者が不在あるいは役割が希薄で、しかるべき妥協点が見いだせないまま、時間切れなどの理由で問題視された事業そのものが中止に追い込まれるタイプである。ある意味では、好ましくない開発を住民が阻止した成功例ともいえる。こうした不適合の開発事例から、従来の制度の点検やあらたな仕組みの創出にも至る例があった。2つ目は、開発調整型である。これは、仲介や調整が成功した結果、ある程度譲歩して歩み寄るなどの成果が得られ、終結段階で事業化が可能になったタイプである。

開発協定を締結したり、条例による高さ規制制度などが新たに提起されたりして、農村の観光地化によって起きる都市化への新ルール創設の機会となった。3つ目は、住民活動型で、これは地域住民の間で完結する自主的な活動であって、第3者の介入や調整を必要とせず、受け入れないタイプである。住民主導の一点突破型活動であり、当初の衝撃力は強いが、長期にわたって波及効果を生み出すパワーには欠ける。特に行政との連携に乏しい点が、継続性や地域への浸透を阻害する要因のように見受けられる。4つ目は、地域振興型である。行政の守備範囲が固く、行政内部での完結の度合いが高いタイプである。担い手は違うが、閉鎖的で波及性の乏しい展開の仕方が住民活動型と似ている。

 

7 地域における新しい仕組みの芽生え

各地の地域づくりの事例を通じていえることは、次のような点だろう。すでに多くの地域でこうした新しい仕組みを目指す動きが、しっかりと芽生えつつある。

 

 

 

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