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「野鳥の森」での採鳥会

 

野鳥の森

「むかしむかし、茂呂山のふもとに住む村人たちは、いちにちじゅう山から鳴り響く音で、仕事も手につかなくなっていました。

その音はというと、岩が転がり落ちるような音で、「がらっ、がらっ、がらがら」と、地響きをたてて日ごとに大きくなっていったのです。

村では、にわとりが卵を生まなくなったり、馬がおびえて動かなくなったり、村人たちも夜も眠れない日々が続きました。

村人たちは、音の正体をつきとめようと、手に手に、すきやかまなどをもって集まったのでした。

そのころの茂呂山は、木がうっそうと茂り、だれひとりのぼる人はいませんでした。

おそろしさをこらえながら村人たちは、山をのぼり頂上に近づいた時です。おおきな岩が「がっから、がっから」と笑っているではありませんか。村人たちは、耳が痛いのをこらえながら、岩にかかっていきましたが、よけい笑い声が大きくなって、村人たちは、ほうほうのていで村に逃げ帰っていったそうです。

次の朝、村の田畑のほとんどが何者かに踏み荒らされていたのです。あの岩のしわざです。村人たちが集まって、どうしたらよかんべと話し合っていると、だれからともなく「あの岩が、毎日、がなり立てているのは、神様の怒りにちがいない。」と、そんな話しが出てきました。

村人たちは、それぞれ家にあるものを持ち合い、岩に供え、にぎやかにお祭りをしたのでした。

それからは、岩はすっかりおとなしくなり、村は平和になったそうです。」

―「鹿沼のむかしばなし」より―

こんな民話が息づく市街地の森「野鳥の森」を、できるだけ自然を残したままで整備してまいりましたが、6月14日にオープン式典を初めとして、鹿沼自然観察会の協力により、探鳥会を催しました。当日は、小雨が降ったりやんだりのあいにくの天候にもかかわらず、50名の参加者は、野鳥のさえずりに耳を傾けていました。

おわりに

山々にいだかれた田舎の街にあっても、自然がどんどん失われてきております。生活様式が全国的に平準化してしまった昨今、社会資本の整備が立ち遅れている地方においては、自然がもろにその影響を受けてしまうのでしょうか。地方に暮らす一員として、自然の保全に向けて、微力ではありますが心掛けていきたいと考えております。

 

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野鳥の森

 

 

 

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