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(3) コスト負担の適正化

環境問題が圏域住民の全てを巻き込んだ広がりを持つに至り、また、持続的発展が可能な社会の実現には、大量生産・大量消費・大量廃棄型の生活様式の見直しが必要であるとされる現状においては、地域住民の自発的な活動が不可欠であり、行政主体がその全ての解決を独自に図ることは不可能である。環境は、その消費者を排除することができないいわゆる「公共財」の一面を持っている。従って、財の提供に係る役割分担とコスト負担を明確にしていくことがこれからの行政に求められる課題であろう。

(4) 都市の「環境管理」

一方、都市における行政主体に目を転じれば、政令指定都市をはじめとした地方公共団体は、地域の環境と開発に責任を有する総合行政主体としてその機能を充実させつつあり、持続的発展が可能な地域社会づくりに責任を有する主体として、環境と開発を統合する観点からあらゆる施策を点検し、体系化していくことが求められている。今後の都市のありようを考える際には、地域住民の利便性の確保だけでなく、「快適な環境」を如何に保ち、持続的な成長を確保していくかという観点からの「環境管理」が必要であろう。

(5) 多様な「快適性」

今後、快適な環境の形成がこれからの環境行政において重要性を増すことが予想されるが、圏域の住民にとっての「快適な空間」は必ずしもその周辺の住民に対して快適さを提供しない場合がある。地域づくりのための諸施策の検討において、環境の観点からの点検が必要であるのはもちろんであるが、個々の開発行為あるいは環境保全行為の実施に際しては、その前段として、「快適な環境」というものが多種多様であること、さらに、今後のまちづくりにおいては、これら多種多様な「快適な環境」の位置づけをより明確にしていくことが求められていくということを理解しておく必要がある。

 

2 行政の果たすべき役割とその在り方

(1) 総合行政主体としての役割とその在り方

平成6年12月25日に閣議決定された地方分権の推進に関する大綱方針において、国は「国が果たすべき役割を重点的に分担する」とともに、地方公共団体は「地域の実情に応じた行政を積極的に展開できるように地域に関する行政を主体的に担い、企画・立案、調整、実施などを一貫して処理していくものとする」とされており、今後とも、新たな環境という視点からの施策の総合化が求められることとなろう。その際には、

1] 資源消費をトータルで見た場合に必要な政策であるか

2] 各主体の役割分担・コスト負担はきちんと切り分けられているか、またそれは如何なる考え方に基づくものか

3] 都市の「持続的な成長」の確保に如何に資するか

4] 事業者・住民等の各主体の意識の改革あるいは積極的な行動を如何に促進するか

5] 「快適な環境」を誰のために提供するのか

6] 都道府県その他の行政主体との役割分担の明確化

等の観点からの検討を行うべきである。

(2) 事業者・消費者としての役割とその在り方

各団体においても、自らの事業者・消費者としての立場からの取組みを率先垂範し、住民、民間事業者のライフスタイルの改善の模範となるべきである。具体的には、適正な廃棄物処理の徹底、公共施設の緑化、ゴミの排出抑制、省資源・省エネルギーの取組みの推進などが挙げられる。

(3) 行政体制の整備等

環境に対する取組みは、環境担当部局のみならず、関係行政分野を幅広く含めて総合的な取組みを必要とすることから、地方公共団体内部においては、関係部局から構成される連絡・協議を積み重ね、外部に対しても積極的に公表・意見聴取等を行うとともに、周辺の市町村と連携した広域的対応等に対応した全庁的な体制を整備しておかなければならない。

 

 

 

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