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平成10年度大都市における行政制度に関する調査研究報告書「大都市における環境行政」の概要

自治大臣官房地域政策室

 

○環境問題の現状

高度成長期の我が国において、最も深刻な環境問題は、多数の人々の生命や健康に直接影響を与えるまでに悪化した産業公害問題であった。しかし、昭和60年代の終わりからは地球環境問題や野生生物の種の減少等生物多様性の保全の問題が、国境を越え世代を越えた影響を及ぼす人類の生存基盤そのものを揺るがす問題として、新たに環境問題の中心課題として浮かび上がってきた。

また、旧来型の産業公害においては、加害者が企業・事業者であり、被害者が特定の地域の住民であることが多かったが、都市生活型公害や地球環境問題においては、すべての企業や一般市民が加害者であり、かつ被害者となりうるという状況が生じてきた。このため、環境対策も、一企業内や産業界における対策に留まらず、広く、大量消費・大量生産型の社会システムや生活様式を視野に入れなければならないようになった。

更に、自分自身で何もしなくても他人の努力によって改善された環境の恩恵を受けることができるという、環境の持つ性質により、行動が阻害されている面もあると考えられる。このことから、環境対策が実際に効果を挙げるためには、環境に対する意識を高めるだけではなく、環境保全行動を促すための動機付けが必要であること、さらに、ライフスタイルの変化とあわせて、環境保全のための経済社会システムの改革のための施策が必要となることが指摘できる。

○大都市における環境行政の今後の在り方

1 基本的な考え方

(1) 環境行政の「プライオリティ」の向上等

環境は、その性質上、全ての住民が無関係ではいられないものであるが、一方で、従来の産業公害等を除けば、必ずしも地方公共団体における政策のプライオリティが高くならない点が指摘できる。その理由としては以下のものが考えられる。

1] 地域住民の環境に関する理解と認識が必ずしも十分でないこと

2] 環境の性質上、他人或いは他団体の努力の結果に「タダ乗り」できること

3] 地道な施策の積み重ねが重要であり、また、その効果が目に見えにくいこと

4] 地域住民の当面の死命を制する問題にはなりにくいことまた、環境に対する取組みが、関係行政分野を幅広く含むため、独立した環境担当部局のみではカバーしきれない(例えば、いわゆる「エコロジー」担当部局と「ゴミ・廃棄物」担当部局が異なるなど)、あるいは調整が困難となる場合があることが指摘されている。当事者間のパートナーシップを構築し、効果的な施策を推進していく上でも、環境問題を都市行政にどう位置付けていくかは重要な課題の一つであろう。

(2) 当事者のパートナーシップの形成

新しい環境問題、例えば、自動車公害などの都市・生活型公害、或いは地球環境破壊問題については、加害者と被害者の区別は必ずしも明らかでなく、その原因の多くは住民一人一人の生活様式にある。そこでは住民の環境学習を推進し、環境保全の取組みへの参加を誘導することが重要である。このため、住民、企業、行政がそれぞれの立場や国境を越えてパートナーシップを形成することが課題となっている。

 

 

 

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