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当時は行政区や公衆衛生組合などの行政的組織を除けば、住民組織としては「契約会」と呼ばれるものがある程度でした。契約会は共有の財産を中心に結ばれる、或は旧来からその地に住んでいる人たちの冠婚葬祭時の手伝いなど相互扶助の考えから結ばれたものですから、主たる活動はその財産の管理運営等に関するものに限られました。財産に関与しない新しい住民たちは、契約会とは無関係でありました。一部の地区を除いて、このように自主的組織がなかったところにも町民総参加のコミュニティづくりの必要性があったのです。

町のふるさとづくりはその推進役となるべき「自主的組織」と町の総合計画の基になる、住民自らの「地域振興計画」を策定することを呼びかけるところがら始まりました。振興会は住民自治の組織であり、地域振興計画は住民自らがこれを策定するものです。現在では全戸が加入する自治会組織として町内に40の「行政区振興会」と15の「地域振興会」があります。行政区振興会はその名のとおり行政区を単位とするもので、最も基礎的なコミュニティ単位としての性格を持ち、地域振興会は更にそのコミュニティ組織の範囲を一回り広げ数個の行政区振興会からなる連合体であり、旧来からの歴史的経過や、河川、地形等の地理的条件を基に結成されたものです。この連合体は従来あまり明確でなかった地理的範囲のコミュニティ組織であり、より広域の交流と共通の地域課題に取り組むことを目的として旗揚げされたものです。

発足当時は住民同士のF惑いや抵抗感もありましたが、振興会は従来からの近隣関係をほとんど損なうことなく、よりふくらみのある、みのり豊かなコミュニティヘと成長してきました。

手づくりの地域振興計画

現在、この15の地域振興会は「住民参加」のシンボルでもある「地域振興計画」を策定しています。それまでの行政区や公民館の分館活動内容に関する計画と言えばスポーツ、娯楽などの親睦活動に関するものがほとんどでしたが、この計画書の内容は産業から生活環境、コミュニティなど全ての分野におよび総合的に地域の問題をとらえ、将来の課題を含めて策定されています。「自分が住んでる地域の不満、問題は何か。それをどうしたらよいか。」つまり地域の将来ビジョンとも言うべきものが、住民自らの手によってつくられました。町の呼びかけにより各地域毎に「地域振興計画推進委員」が選出され、各行政区からは「計画員」が選出されて、住民から広く意見を聞くために行政区毎の会合が繰り返し、繰り返し開かれました。初めは「役場の職員が楽をするためにやるんだろう」という声が多かったものの、あらゆるものが出来るということになると、「会長こういうのはどうだ」という発想になって、いろいろなアイデアが盛り込まれた地域開発計画づくりが可能になってきました。この計画の策定作業は、自らが置かれている現状を見つめ、住民相互の協力がふるさとづくりにとって如何に大切であるかを改めて感じる機会にもなり、役場に働きかけこれを実現していけるのだなという手ごたえを掴むこともできました。現在各地域振興会が策定している計画書は、当初に策定されたものを平成3年に見直し修正されたもので、15の集落において様々な住民創意と住民ニーズが集められ、その集大成として「本吉町地域振興計画」が樹立され、まちの総合計画はこの地域振興計画を基に策定されています。

 

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本吉ふるさと秋まつり

 

振興会の活動

振興会は自主運営されており、特に行政区振興会の運営機関は専門部制が取られております。総務、教育文化、福祉、体育振興、生活環境、産業振興などいろいろな部会があり、運営方法や役員の構成、会費などは各振興会独自に決めています。

 

 

 

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