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一方、既に複数の個別GISを導入している場合は、段階的に各システムの連携を図り統合化を推進すると同時に、新規システムの導入に当たっては、統合型GISを念頭においたシステム間の連携を確保していくことが重要である。

なお、情報システムの構築においては、将来的な視点に立ち、国際的な動向を踏まえたソフトウェア及びハードウェアの選択が必要であり、特に技術仕様については、ISO等を中心とした国際標準への対応が重要である。

(3) 運用面

統合型GISの環境では、GISと他の行政情報システムとの連携により、GISデータに新たな属性データを重ねて利用することが可能となるため、行政事務の効率化・高度化による住民サービスの向上が期待される。また、データを庁内で適切に流通させるためには、情報案内役としてのクリアリングハウスの整備が重要である。さらに、電力・ガス・電話等のライフライン系公益企業が整備している利用可能なデータを活用することは、データ整備コストの削減のために有効である。

(4) 整備推進面

システムの整備に関しては、複数部署で横断的に活用されるGISの特性上、行政サービスのあるべき姿を描き、その中でGISの役割とそれを実現するために必要な機能を明確化し、体系的にシステムを開発していくことが重要である。

データの整備計画策定のポイントとしては、庁内において利用頻度が高く、かつ共用範囲の広いデータを初期段階から整備することが望ましく、その後、個別部署におけるGISの導入にあわせ、段階的に個別利用データの整備範囲を拡大していくこととなる。

 

3 統合型GISへの課題と解決方向性

統合型GISの実現にあたっては、関係諸法令・組織体制・運用ルール等の制度面の課題と、データの整備・システムインフラ構築等の技術面の課題とが存在するが、特に、地方公共団体におけるGISに固有な視点から、次のような課題を検討する必要がある。

(1) 地番・家屋データ等の庁内における多目的利用

従来、地方公共団体の固定資産税業務を中心としたGISでは、地番・家屋関連のデータが広く用いられてきた。これらは、地方公共団体の他の業務においても骨格となるデータとして活用が期待され、利用ニーズが高い。したがって、GISの有効利用の観点からも、今後、地方公共団体におけるGISの利用環境に合わせ、首長による承認と流通させるデータ範囲の絞り込みを行うこと等を担保に、個人情報保護に十分留意し、庁内における複数部署での利用を促進していくことが望まれる。

(2) 住民基本台帳データと空間データとの連携

住民基本台帳システムと統合型GISとの連携は、情報システム資源の有効活用を促進する上でも、今後極めて重要な意義を帯びてくるものと考えられる。このため、庁内での住民基本台帳データの利用を促進し、複数部署においてGISデータとの連携利用を図ることが望まれるが、この際には、万全な個人情報保護対策が必要である。したがって、庁内での利用に際しては、利用承認手続き・利用の際の安全保護措置等、必要なデータ管理措置を規則・要綱等により定めた上で、必要な部署において、必要な情報のみ、利用することが望ましい。

(3) 既存システムとGISとの連携

地方公共団体における統合型GISの活用に際しては、住民基本台帳以外のデータについても、統合型GISとの連携により業務の効率化と住民へのサービス向上が期待される分野が多く存在している。したがって、既にシステム化が図られている業務においては、今後のGISとの連携が重要な課題となることから、連携すべきデータの選定や、共通インターフェースを考慮したシステムインフラの整備が望まれる。

 

 

 

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