「地理情報システム(GIS)に関する調査研究報告書」の概要について
三田 啓 (自治大臣官房情報政策室課長補佐)
1 はじめに
近年、我が国においては、国土空間データ基盤の整備に関する動きを始めとして、GISに関する取組みが活発化しており、地方公共団体においても高度情報化システム整備の一環として、GISに対するニーズが顕在化してきている。
このような背景を踏まえ自治省では、平成9年度に地方公共団体におけるGISの整備・推進について調査研究委員会を設置し、主に以下のような点について検討を行った。
(1)先進的にGISが利用されている地方公共団体の実態分析及び利用面での課題の抽出とその解決の方向性
(2)地方公共団体の複数業務分野で利用できるデータの内容
(3)住民基本台帳システム等、地方公共団体の既存システムとGISとの連携
(4)公益企業等の民間団体が整備しているデータに関する地方公共団体での利用
(5)GISの整備・運用に際し、措置すべき個人情報保護及び守秘義務の観点から措置すべき対応策
2 統合型GlSのビジョン
今回の調査研究委員会では、庁内の複数部署において可能な限りデータの共用を推進し、全体として付加価値の高いGISを実現するため、「統合型GIS」という概念をキーワードとして、データ面、システムインフラ面、運用面及び整備推進面から検討を進めた。
なお、本報告書において、統合型GISとは、庁内で共用できる空間データを明確化し、その整備・管理を体系化することにより、運用に際し複数部署でシステムが異なる場合でも、必要なデータの共用を実現している情報システムの形態をいう。
(1) データ面
統合型GISにおいて整備されるデータは、各部署で共通的に使用される共用データと、特定の部署でのみ使用される個別利用データに大別される。
共用データとしては、庁内において利用ニーズの高い、道路・地番・家屋・主要構造物や地物・行政界等のデータが挙げられる。一方、個別利用データとしては、共用がプライバシー保護の点で問題となるデータ、個別部署でのみ利用されるため共用の必要性がないデータが想定される。また、データの整備については、縮尺で規定された従来の地図データ作成仕様にとらわれずに、利用者が必要とするデータ品質を中心に検討すること、品質に合わせて適切な作成技術を選択すること等が重要である。さらに、データ整備におけるコスト軽減を図るため、共用データについては、一括作成が望ましい。
次に、データの品質については、データベースの構築段階によって異なることに留意する必要がある。これは、データベースの初期構築段階では入力するデータの品質がそのままデータベースの品質となるが、データの更新段階では各データごとの更新目的及び範囲が区々となっている場合も想定されることから、結果として、更新用のデータの品質がそのままデータベースの品質になるとは限らないこともあり得るためである。
(2) システムインフラ面
一般的に、新規にGISの導入を進める場合やGIS以外の情報システムの蓄積も比較的少ない地方公共団体では、初期の段階から統合型GISを念頭においたシステムインフラの整備を行い、新たなシステムが追加されるごとに、既存システムとの整合性と連携を確保することが望ましい。