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国連ではこのような地球環境の悪化に対処すべく、1992年にリオ・デ・ジャネイロにおいて、環境と開発に関する国際会議(地球サミット)を開催しました。その時のキーワードは「持続可能な発展」(SD=サステイナブル・ディベロップメント)でした。そしてその実現への行動計画として、「アジェンダ21」が採択され、各国に同様の行動計画を策定するよう促しました。また、昨年(1997年)暮れに京都で行われた二酸化炭素の排出抑制に関する国際会議はまだ記憶に新しいところです。この会議では、アメリカ、EU、日本が最終的には排出規制目標量で一応の合意に達しましたが、途上国に対しては規制を課するには至りませんでした。このように経済発展を優先する途上国と環境保全を重視しようとする先進国の間の意識の差は大きく、真の持続可能な地球社会の実現にはまだ幾多の困難が横たわっています。

一方国内を振り返ってみますと、戦後の日本経済は、戦災復興期から高度成長期を経て安定成長期まで常に右上がりの成長過程を続けてきました。しかし、今や新たな転換期にさしかかってきています。昭和30年代の全国総合開発計画から四全総にいたるまで、戦後の国土計画に一貫していた考え方は、国土の均衡ある発展を目指した一極集中の是正と地域格差の解消でした。しかし、長く続いてきた東京一極集中の時代はやっと終わりを告げ、これからは地方が活性化できる時代が始まろうとしています。問題は、わが国にこれから活性化しようとする力が残っているかどうかという点です。少子化・高齢化による社会福祉費などの負担増が避けられないのは確かですが、大幅な税収の増加が見込めない今後の財政難をどう乗り切ればいいのでしょうか。地方自治体の財政力にも限界が見えてきています。

これまでは各県や市町村が競って同じような施設をつくり続けて来ました。ハコモノ行政と悪口をいわれるように、ハードさえつくればこと足れりとする風潮が支配的でした。日本各地につくられた立派な多目的ホールが、現実にはあまり利用されていないという実態に見られるように、無駄な投資も数多くなされてきたことは否めません。しかしこれからは、となりの町がつくればうちもという、安易な横並びの物真似行政は許されません。また、消費は美徳なりというように大量生産・大量消費・大量廃棄を促進してきた日本経済は、今や大きな曲がり角にさしかかっているのです。すなわち、資源やエネルギーの供給の限界と地球的な環境の制約条件のもとで、過去の傾向を将来に延長するという外挿法の適用が不可能になってきています。わが国は今やこれまでの拡大型経済システムから脱却して、省資源・省エネルギー・リサイクル型社会の形成に向けて新たな展開を図らなければならない状況に直面しているのです。

 

2. 地域連携の必要性

では、限られた資源を効率よく活用し、地球環境にやさしい国土を形成し持続していくにはどうすればよいのでしょうか。その一つの方法として最近急速に関心を集めてきているのが地域連携の考え方です。例えば、いくつかの隣接する自治体が共同で利用できる施設をつくろうという動きが始まってきています。ある町には世界的なコンサートホールを、また隣の町には先端的な総合病院を、さらにもう一つの町には大きな図書館をというように、資金を寄せ集めて施設をつくるのです。そうすれば、限られた予算でより立派な施設をつくることが出来、しかもそれらを効率的に運営・活用することが可能となります。このような趣旨で栃木県北部の大田原市と西那須野町の境につくられた西那須野ヶ原ハーモニーホールは、全国でも初めての地域連携型施設として注目を集めています。さらにこの考え方を発展させていくと、近接した市町村だけでなく、県境をこえた広域的な地域連携へと拡張していくことができるのです。現に、通勤・通学や買い物など住民の生活圏や企業の経済圏は、県や市町村の境界を超えて拡大しています。そして、このような地域連携を推進していくうえで、道路や鉄道などの交通ネットワークや地域情報化の果たす役割は非常に大きなものがあります。

 

 

 

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