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しかし、このような提言の背景や根底にある考え方には傾聴すべき何かがあるような気がしてならない。それは、我国の現在の行政や社会のシステムにおいては、一般的に云って評価に応じて士気が鼓舞されるような仕組みが少ないということである。逆に、むしろ成功の成果を減殺するようなシステムや風潮も数多くみられる。これは、明治以来続いた我国のキャッチアップの時代に全体の水準を均質的に引上げることを求めてきたこと、戦後において“公平”の価値観が優越的であったことなどの結果ではないかと思う。特に、地域的な活動については、そもそもその評価の機会が乏しいうえ、一定の評価を得てもそれを更なる成果に結びつける動機や手段などに恵まれないという傾向にある。このようなことから考えて、現在の我国の行政や社会のシステムの中に、成功の成果を一層大きくするような仕組み等をもっと導入することについては首肯できる面がある。殊に地域の活動については、それが地方公共団体の活動であれ、民間の活動であれ、そういう視点からのインセンティブが期待されると思われる。

それにつけても気になるのは、今、地域に元気の出るようなテーマやコンセプトがなかなか見い出せないことである。また、今日各般にわたる大きな改革が進められているが、それと同時に、人々の基本的な意識の変革が併行して進みつつあるのかどうか。奇異にみえる上述したような提言も、それをそのまま受け入れる訳には行かないとしても、見方を変えれば指唆的でもある。今日においては、既存の枠組みにとらわれない意識から発想されたテーマやコンセプト、手段や手法などこそが地域を元気にすることができるのではないかと思う。

地域に元気の“種”がないわけではない。ただ、従来のままの土壌と環境ではそれが発芽して育ちにくくなっているのではないかと思うのである。時代の大きな転換期に当たって、地域に元気の“芽”が出やすい、そしてそれが育ちやすい土壌と環境を整えていくことが重要となっているのではなかろうか。

 

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