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自治だより 平成10年5月号

(奇数月発行)

(通巻No.125)

 

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地域に元気を!

松本 英昭(自治事務次官)

 

最近「地域に元気がない。」という声が聞かれる。その背景には、我国全体にすっかり浸透してしまった景気の停滞感や国・地方を通ずる未曾有の財政危機があり、そのうえ各地域に特有の事情(例えば北海道であれば大銀行の破綻、九州であれば東南アジア経済の行詰まりの影響など)もあることは否定できないが、どうもそればかりではなさそうである。

21世紀に向かって、時代が大きな転換期にあることは誰しも認めるところである。そして、それに対応して大きな改革も進められている。一般的に云って改革は“痛み”を伴うものであっても、元来夢のあるものである。しかし、率直に云って今は夢や感動はあまりみられず、反面で改革に対する不安感がみられるのではないかという指摘がある。このようなことからか、「何か地域から元気が出るような知恵はないのか」と時々尋ねられるようになった。その際よく引き合いに出されるのが、例の「ふるさと創生―1億円事業」である。(もっとも、この事業は現在まで引き続いて財政措置が講じられているということについては、ほとんどの人が意識していないようである。)「ふるさと創生―1億円事業」のような、いやそれ以上に地域を元気づける発想、テーマやコンセプトそれに手段や手法がないのかということである。

丁度先日、ある人が「地域の施策や改革の成果に対する評価によって、補助率を高くしたり、交付金を支給するといった仕組み」を提言しているのを聞いた。そうすることによって、地域の意欲が高まり、またその成果が地域に定着するためのインセンティブになるというものである。これまでの感覚から云えば、施策や改革がいい結果をもたらせば、メリットが生じ、その成果を享受できるのであるから、そのうえに重ねて特別に有利な扱いをすることはいかがなものかということであろう。まして、補助金や交付金については論外ということになるのではないかと思う。

 

 

 

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