介護保険は、端的に申しますと寝返りも打てないような人が家で一人で寝ている時には、もう介護保険の給付だけでは対応できない。そういう方は、施設に入って頂くという形で設定されている訳です。そして町の行政にしましても、介護保険に補足的な行政、例えば高齢者の方の食事会のお金を出すとかそういうものも必要ですし、それだけでは全くダメで、地域のコミュニティーの相互扶助とか、又自分で高齢期の為に蓄えたお金で自分でサービスを購入するとか、そういったことが必要になってきます。
先程申し上げた支出の面での5つぐらいのこれからの方向としてのポイントを申し上げましたが、介護保険は公的な部分と互助と自助という部分に全部関わるのみならず5つのポイント全部に関わってくる事なのです。これをどううまくやっていくかということは、ある意味で地方自治体にとれば練習問題を突き付けられているのと同じだなというふうに思います。その政策決定の方から見て行きますと、老人福祉では計画を立てなければならなかったし、又これからも介護保険事業計画を立てなければならないんです。その時に、一人だけで計画をやってしまった、書いてしまった行政もあれば、シンクタンクに任せてしまったものもあります。だけど、これからは住民参加という事が鍵になる訳ですから、どれくらい住民参加ができたか、ヒヤリングとか委員に入ってもらうとか、住民の声を反映できたかという事がこれからは鍵になります。又、役所の中で他の部署との連携をどうやって成功させたかというのも鍵になるのですが、私の知る限りでその点ですごく惜しいといいますか、これを充分に生かしきれていないなと思います。供給主体にしましても、もう市町村はこの点で頭を切り替えなければいけない。自分が必ずしも供給主体になる必要はなくて、できるだけ自分の町に優秀な民間非営利団体等そういう人達を呼び込んでくるということが大きな仕事になると思いますが、そういった面での意識改革というのがまだ進んでいないなというふうな事を思います。政策の評価に関してもまだです。
あと時間がないので一つだけ申し上げますと、私は自分の親を老人ホームに2ヵ月だけ入所させて亡くしました。ちょうど忙しい時期で、入ってからはすぐには行けなくて、夏休みに見舞いに行こうと思っていたらもう父は亡くなりました。その老人ホームに行って、私は唖然としました。生きていてそれを知ったらもっと辛かったと思ったのですが、老人ホームの部屋の中が紀南地方の夏の昼の2時だというのに、部屋の中が真っ暗なんです。基準は満たしてあるんです。部屋の窓の大きさは大きいのですが、その窓の外にすぐに山がきてて光が入らないような状況なのです。そういう状況の中で高齢者が生活しているという事は、これはやはりおかしい。サービスの質をどうやって確保するかという事が、これは他の先進諸国の例を見ても、国とか県とか市町村を含めた大きな問題になっておりますので、私は地方分権と共に行政の仕事が大きく変わるんだということを頭の中に入れておくほうがいいのではないかなと思います。時間がきたのでこれで終わります。