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これがやっぱり大事なのではないだろうか、こういう事を考える訳であります。それでは、どうやってこれに近づいていくかということに、夏目漱石が大変上手いことを言いました。それは山道を登りながらこう考えた。「知に働けば角が立つ。情に竿させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかく人の世は住みにくい。」至言であります。ということは、夏目漱石は日本人を知型と情型の二つに分けました。知型というのはインテリジェンス。知力によってこれを一つの判断基準にしていこう、ものさしにしていこう。どういう傾向をするか、何をやっているのか、何の為にそういうことをしなければいけないか、内容を重んじていこう。情型は違います。いわゆる心に受けた、感情に受けたインパクトによってこれを決めていく。好きとか嫌いとか、これも結局一つの判断基準になるわけであります。どうゆう事が起こるかと言えば、何をではなくて、誰がやっているのか、誰の為にそういうことをしなければならないのか。こういうことになってくる訳であります。

結局の所、何を申し上げたいかといえば、私共が公衆になっていく過程、地方分権を進めていく過程には、今までに無かったいろんなことが起こって参ります。これはつまり地方分権になったからといって、地方の住民がみんな幸福なるってことじゃなくて、今度はそれの黄金の負担をしなければいけない等いろんな事があります。考え方も変えていかなければいけない。こういう事が起こって参ります。その時にやはり右側の方でお考え頂きたい。つまりなるべく左側の線はこれをやめていきましょう、こういう事であります。

徳島県にはそういう例はないんですけど、東京に行くとあるんです。回覧板が回って来ます。これは町会長が回したものなんですけども「Aさんがこういう案を考えました。大変いい案だと思います。賛成する方は署名捺印してまとめて下さい。これを行政機関に要望書として出したいと思います。」こういう事を書いてある訳です。結局Aさん、Bさん、Cさんと回るんですけど、Dさんの所で止まっちゃうんです。で、町会長さんが心配して「Dさんこんにちは。」「いらっしゃい、どうしました。」「お宅回覧板回って来てない。」「回ってきてますよ。」「どうした、読んだ。」「読みました。」「Aさんの提案どうだった。」「すばらしいですね。Aさんて本当にすごい。いい事考えてますね。」「よかった安心したよ。Aさん心配してるんだよ。」「どうしました。」「いや、お宅で止まっちゃったからさ。どうした気にくわないのかな。心配してたよ。よかった、よかった。いい案ならさ、すぐはんこ押して隣に回してよ。」「いえ、私署名捺印しません。」「何で、だって今とってもいい案だって言ったじゃないの。」「案はいいんですよ。いいんですけど私Aさん嫌いですから。

 

 

 

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