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ところが、デンマークでもスウェーデンでもそうですが、ドイツのような地方分権が進んだ国では、行政職も専門志向であるということです。例えば福祉大学を出て現場経験を持っている人が福祉部長になっています。

人ということになると、行政職だけではなくて、住民参加、市民参加ということがありますが、まず政治家、議員さんの活動です。今日は議員さんも多く来ていらっしゃるということですが、日本の地方議会の現状を見ると、どうしても地域の世話役的な色彩が強いと言えると思いますが、地方分権の社会では、環境問題だけは私に任せておけ、介護の問題だけは私に任せておけ、これだけは負けないぞというような、専門分野を持った議員さんが誕生してほしいと思います。

それから、市民の立場に立ってみれば、情報が入手しにくい、発言の場が少ないという現状の問題がありますが、千田先生の基調講演にもありましたように、やはり徹底した情報公開や審議会への参加促進のようなことを図っていかなければいけないと思います。介護保険については、事業計画の委員会に市民の方々を何人か入れていくという、市民の公募枠をつくっている自治体が非常に増えています。このように、今までの地方行政の仕組み自体も見直していかなければならないと思います。

千田先生のお話にもありましたが、自治体は現場を持っています。そういった意味で自治体はアイデアの宝庫です。宇治市のパイロット自治体のことを資料に載せていますが、一般の人だれもが、あの小学校の空き教室は何か別の施設に使ったらいいのに、生涯学習センターにしたらいいのに、福祉施設にしたらいいのにと思っておられるわけです。しかし、縦割り行政の中で、そういった施設の転用がなかなかできない。そこで、宇治市では、私が家から歩いて10分くらいのところにある小倉小学校の空き教室を、地方分権の特例制度を利用して福祉施設に転用しました。それがきっかけになって、今では学校の転用については、文部省に対して報告書を出せば文部大臣の承認があったこととみなされるようになり、手続きが簡素化されたという事実があります。したがって、地方分権の社会では、自治体がアイデアの宝庫として、様々な施策に対して積極的に提言していく必要があるのではないかと思っています。

河本 ありがとうございました。
続きまして、千田委員さんには、横手市長を5期20年務められた経験をもとにして、市町村と住民のかかわり方、まちづくりについてお願いします。

千田 市民参加、住民参加というのは、やはり段階を踏んでいくだろうと思います。第1段階は、首長とか職員が、移動市長室をやるとか、市民にいろいろ役を与えるとか、そういう参加をしましょうという呼びかけだと思います。

第2段階は、市民・住民の皆さんに市役所の権限を与えて、仕事を本当にやってもらう。共同運営、共同管理です。私のほうでは雪を流雪溝という堰に入れて流していますが、これの権限は町内会長さんたちがみんな持っていて、市役所の課長たちと一緒になって共同運営で、お金を持たせているのです。住民参加、市民参加のやり方は、そこまで行かなければいけないと思います。

第3段階は、先ほど少しお話ししましたが、本当に大事なことは市民が決定するということです。先ほど言いましたのは、河川工事のために市役所を移転しなければいけない。市役所のほうでA、B、C、D、Eの5つの案を出して、これから選んでくださいと言って市民の皆さんにどんと渡す。市民は、市庁舎位置決定に関する市民会議というのを開いて何とか決めようというので一生懸命になる。最終的には決めかねて、郊外と市内中心の2つの複数答申をよこしましたが、その後、市役所の課長たちが、例えば税務課長と福祉事務所長、建設課長と都市計画課長の2つに分かれて、この2つについて徹底的に、自分の考えは入れないで、もしこちらにつくるとすれば何がいいのか、悪いところはこのように直すというような案をつくって、それを市民の皆さんに話して歩いたのです。

 

 

 

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