そこで、実は9月18、19、20の2泊3日で、全国の名立たる学者さんが本町に来られます。このタイトルがすごいタイトルです。私が考えたタイトルではありません。その学者さんたちの仲間が考えられたタイトルです。「智頭を世界一美しくするサミット」を開きたいと、町長あてにファクスが届きました。条件はといえば、全部名前のある学者を連れていく。飛行機代は不要。寝るところは公民館でも体育館でもどこでもいい。ただし、酒はただにしてくれ6本町にとってこんなおいしい話はないわけです。公園をつくらせればこの先生が日本一、あるいは木造に関してはこの先生が日本一、そういう名立たる先生が、ある1人の学者さんの呼びかけによって80人くらい気楽に集まってくれるわけです。私は、この機会をとらえて「智頭を世界一美しくするサミット」を開くことにしています。酒はもちろん振る舞います。安いものです。
前述のように、日本ゼロ分の一ということで各地区に50万円ずつ補助していますが、私はむしろ今度は県のほうから、例えば副知事が、「よし、各町村に10億全部ばらまいてやるから個性を出しなさい。しかし、それから脱落した町は吸収合併する」ということをすれば、首長は恐らく青ざめるでしょうね。生きるか死ぬかの競走ですから、首長、議会あるいは町民が一体になって、おらが町の個性を出さなければいけない、どうしてもおらの町を守らなければいけないということになるでしょう。これがこれからの一番の原点だと思っています。
これから合併問題が出たときに、智頭町は、参画・参加の合併なら大いに結構ですが、吸収という言葉は絶対使ってもらわないつもりです。したがって、今からそういう個性のある、自信のあるまちづくりをしていかなければならないということで、今、議会、職員一緒になって、町民を巻き込んで、そしてプラスアルファ、ただの酒を飲ませてくれたら世界一美しい町にしようじゃないかというすばらしい先生方と一緒になってやりたいと、このように思っています。
河本 ありがとうございました。
次は、斉藤先生に、まちづくりについて、市町村と住民とのかかわりといった角度からお願いできればと思います。
斉藤 こういったシンポジウムに出させていただくときには、必ずその地域の福祉の事情を聞いて帰ることにしていますが、いろいろな地域を訪問し、福祉が進んでいる自治体には3つの条件があると感じています。1つは財源ではないかと言われる方がいると思いますが、決して財源ではないのです。お金がなくても頑張ってレベルの高い介護サービスを提供している自治体は結構あります。
私が思っている3つの条件のまず1つ目は、まちづくりに対して、あるいは介護の問題や地域の問題に対して熱意を持って取り組んでおられる首長さんがいるということです。そういう市長さん、町長さん、村長さんがいるところの福祉は非常に進んでいます。もちろん環境もそうです。2つ目は、熱意のある職員の方がいるかどうかということです。3つ目は、その地域に首長さんや職員の方々をバックアップする口うるさい市民の方がいるかどうか、この3つが住みよい地域をつくっている条件だと思っていつも地域を回らさせていただいています。今、寺谷町長さんのお話を聞いてその3つの条件を思い出したのですが、首長さんが頑張っていらっしゃる地域というのは、本当に元気になります。
最後の発言になると思いますが、環境問題もそうですし、介護の問題もこれから市町村がやっていかなければいけない。県の役割も大きくなってくるという中で、先ほど千田先生からドイツの環境行政の取り組みのお話もありましたが、介護の政策や環境の政策で有名な国々は、いずれも地方分権が進んだ国であるということが特徴的です。もちろん地方分権に伴って行政の仕組み自体も考えていかなければいけないと思いますが、その中で言われているのが、地方分権に必要な「3ゲン」、つまり、「権限」「財源」「人間」です。全部説明する時間がないので「人間」の項目だけお話ししますと、例えば今、日本の地方行政の職員の方々は、大体2〜3年交代で職場を回って、ジェネラリストとしての、行政マンになることが期待されています。