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高橋 今までまちづくりをやってこられましたが、激しい商業競争のために、自分の力を超える装備をしてきた。例えば、結局商店街にいてもだめだから、身分不相応な借金をして大型店に入っていく。しかし、もう既に3分の1なりが退店しているという状況です。商店主はどちらかといえば、まちづくりは行政がやるものという観念を持っていますが、これは完全な間違いです。それは、商業競争が非常に激しくなって、多面化・多様化してきたということで、厳しい競争を強いられているからだろうということになりますが、どちらかといえば、こうしてほしい、ああしてほしいということは言うが、それについての責任は持たないというのが従来の商業者のあり方であったのではないだろうか。それを何とか直すべくということで、今度の中心市街地活性化法というのを早目に実施しようということで、この秋口からやられることになったわけですが、これによっても行政に頼ることは恐らく間違いないだろうと思います。

ただ、この法律の中で注意してほしいのは、この基本政策の策定に当たって、国や都道府県が助言したり助成することができるとなっていますが、この助言が指導・監督にならなければいいがなという気がするわけです。もしそうなったときには、恐らく今以上に衰退していくのではなかろうか。国や地方公共団体は、総じて言えば行政のまちづくり政策をたどっていくと、いろいろな政策がだんだん手厚くなっていきます。しかし、現実問題としては商店街は寂れていっているという現状から見ると、先ほどから申し上げているように、行政と住民とのすき間が大きいのではなかろうかという気がしてなりません。

そこで前述のように、自己決定はするが自己責任を持たないじゃないかというのを、何とかして両者が一体になって、自己決定をして、自己責任をとるという体制に持っていけないだろうかというような気がしてなりません。これが今後のまちづくりの一番重点になっていくだろう。そうすれば、前述のように、環境を中心とした社会規制、それに伴うところのまちづくりができていく。東大の名誉教授の伊藤滋さんがおっしゃったように、フランスで見られるそうですが、3階に学生を住まわせて、若者と年寄りが住んだらどうか。そして、町のにおい、生活のにおいをさせたまちづくりをしていったらどうだろうかということを言っていますが、私もそのとおりだと感じています。

河本 ありがとうございました。
次に、道上先生に、今まで数多くかかわってこられた県内のいろいろなまちづくりについて、特に住民参加型の行政システムのあり方といったことについてお願いしたいと思います。

道上 我が国の場合、今までどうしても経済とか産業に投資して、まず経済的に豊かになることを追求してきました。それも戦後ゼロから出発するときはやむを得なかったと思いますが、その反面、町にまちづくりのための投資が非常に少なかったのではないか。官主導で多少はやられてきましたが、それでも欧米の町に比べたら非常に汚い。あまり町を見て歩くような気がしないのです。その要因としては、投資が非常に少なかったということと同時に、官主導型でやったけれども、それぞれの人が持っている土地所有権が非常に強過ぎてなかなかうまくできなかった。先ほどお話がありましたように、その辺で苦労されたのではないかと思います。

そこで、これからはぜひ住民参加型のまちづくりが必要ではないか。今のところは自己主張ばかり多くて、なかなかうまくいかないのですが、例えばこの近くを流れている川についても、住民が集まって、その中に行政も入っていって、みんなでどうして川の改修を図ろうかと考える、そのようなシステムをこれからはぜひつくっていかなければなりません。

 

 

 

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