そこで、2000年の4月からは公的介護保険という新たな制度が導入されます。この制度については細かくお話しする時間もないし、する必要もないかと思いますが、私たち国民は40歳以上になると2,500円程度の保険料を払うことになり、65歳以上で介護が必要になった場合には、介護の認定を受けて、その認定のランクに応じて介護サービスを受けることができるようになるという新しいシステムが始まります。今日、鳥取県庁でお話をお伺いして、幾つか感じたことを申し上げますと、鳥取にお住まいの方はもう既にご存じのことだと思いますが、鳥取県は日本の国内で比較すると、高齢化率が高く、全国で6位です。
次に、老人世帯が多いということです。4分の1が独り暮らしか老夫婦世帯、あるいは高齢者の親子世帯というように、高齢者だけの世帯が非常に増えてきており、地域の支援システムが一層必要になってきています。
これから地方分権の時代には、自治体が責任を持って介護サービスを整備していかなければいけないことになりますので、ある意味で自治体間のサービス競争となってきます。そこで、厚生省では毎年、老人保健福祉マップ、通称「福祉マップ」と呼ばれている資料を出しています。ここには3,555市町村のホームヘルプの利用率、デイサービスの利用率等すべての介護サービスの利用率が書かれていて、ランクづけされています。この資料を私は鳥取にお伺いする前に見てきましたが、鳥取県は、全国の政令市と都道府県を合わせた中でも、すべての介護サービスにおいて10位以内に入っているという非常に優秀な県です。それで長寿社会課の方に、この優秀な成績の理由をお伺いしたら、「あまり実感はない。もっともっと頑張らなければいけないと思っている。」という言葉が返ってきました。私は「すごい県だな」と思いましたが、これからの地方分権の時代には、自治体の頑張り具合を評価するための比較情報というのが非常に重要になってきます。
もう1つ驚いたのが、鳥取県では福祉マップの鳥取県版をつくっていることです。高齢化率、ホームヘルプサービスの利用率など、どこの市町村が頑張っていて、どこの市町村がまだまだかというあたりの数字を色分けしてわかるようにしてありますが、このような中で市町村が競い合い、レベルアップが行われているのだなと思いました。
介護保険が2000年に導入されて一番心配なのは、これは鳥取県だけの問題ではないですが、保険あってサービスなしということにならないかということです。1960年代に国民健康保険が導入されたとき、保険料を払っても無医村では医療が受けられないという問題がありました。みんな保険料を払うようになったら、今まで「福祉のお世話になりたくない」と遠慮していた人たちもサービスを利用するようになります。今の医療制度と同じようになるわけですから、そういったときにサービスが十分あるだろうかという心配があります。これはどこの自治体でも同じです。
もう1つ、鳥取県の場合で印象的なのは、広域対応への動きだと思います。近隣の市町村が市町村民に対してきちんとしたサービスを提供できる、きちんとした認定審査ができるように、東部、中部、西部という圏域に分けて広域対応で行うことが進められています。これから介護保険が始まってくれば、介護サービスの整備は市町村の責任になってくるでしょうし、県は市町村のコーディネーター役、調整役、そして情報提供をする役割がますます必要になってきます。
河本 ありがとうございました。次に、寺谷町長さんにお願いします。智頭町はご承知のとおり高齢化率が26.3%ということで、全国の15.7%に比較すると非常に高いわけですが、高齢者の福祉について、町の取り組みなどについてご意見をお願いします。
寺谷 今おっしゃるように、本町は高齢化率が26.3%と非常に高うございます。そこで、今日は智頭町に限ってお話しさせていただきます。
私は1年前に、ある保育園の子どもさんに「おじいちゃん、どうしてる」と尋ねたことがあります。そのときどういう返事が返ってきたかといえば、「おじいちゃんはいつもボールを打って遊んでいる」と。ゲートボールかグラウンドゴルフではないかと思いますが、「遊んでいる」という言葉が保育園児から返ってきたのです。