したがって、むだを省くとなれば、陳情というものの考え方自体を変えていただきたい、また変えなければいけないという感じがしました。全国で市町村の首長あるいは議員さん等が年間使われる費用は莫大なものだと思います。よく考えれば、我々地方が東京の経済を養っているのではないかと、素人ながらこんなことを思いました。
そして、民間出身の町長として今後の市町村の職員の姿勢ということですが、私は1年前に町長になった時、職員にこういうことを申しました。要は住民がいるから職員も議会も町長も必要になってくる。しかし、どうも逆三角形になっているのではないか。千田先生からもピラミッドというお言葉がありましたが、頭でっかちで本当の主役の住民が点である。これではいけないので、正三角形に直そうじゃないか。人間だから失敗もある。しかし、それを恐れるな。住民のために本当に汗水流してやって、そのために失敗したのなら私が全部責任を追う。そのために私が出てきているのだということを口酸っぱく言っています。
私は、町民に光を与えるのは首長もさることながら、職員の姿勢であるという思いで毎日を過ごしています。そういう意味で、千田先生は最後に「政治というのは住民の皆さんが主役ですよ」とおっしゃいました。私もまさに同じことを1万人の町で唱えているわけですので、ひょっとして私も、横手の市長にもなれるのかなと、このようなことを思いましたが、千田先生と全く同じ感覚で実は過ごしています。
町民のニーズにどう応えていくのか。行政というのは、ともすれば親方日の丸的な感覚が脈々と流れています。そして、民間から出てみると、非常に不可思議なことがたくさんあります。これは我が町だけではなく、全国的な流れから来たものだろうと思います。例えば田舎の地域になるとバスもあまり回数が通っていません。お年寄りがやっとバスに乗って役場に来て手続きをする。ところが、書類や印鑑を忘れて手続きができないといったときに、「おばあさん、印鑑がなければだめですよ」と言い切ってしまえば、職員としては手続的には間違いはないわけです。しかし、果たしてそれでいいのかどうか。智頭町という狭い地域ですから、車で走れば必ず15分くらいでどの地区にも着いてしまいます。そういう場合、「おじいさん、それじゃ家まで帰ろうか。車に乗りなさい」と、そういう本当に心の通ったサービスをすることが、これからの非常に大事な職員のスタンスではなかろうかと思います。
先ほど逆三角形と言いましたが、人事異動したときに広報に本来ならば町長、助役、課長と並べるのが大体パターンですが、私は今回全部変えました。私は一番下の点です。そして、まさに千田先生がおっしゃった「住民あなたが主役」、それを大きくタイトルにしました。そして、いわゆる町民を頭に持ってきて、最後三角形の一番点であるところが町長・寺谷というふうに現実に書いています。これからの時代は地方分権まさに正念場です。したがって、職員も、もちろん首長もそうですが、ただ昔とったきねづかというのでなくて、これからは真剣勝負の世界が始まってくるのではないかと思っています。
私は、町長になって月に1回、第2月曜日に町長室を開放しています。住民との対話が非常に重要だと考えていますので、どなたでも結構ですから私の部屋に来てください。どんなことでもいい。ただし、陳情はご遠慮願いたいということで、やってみますと、かなりの住民が町長室を訪れます。うれしいことに、最初は陳情だらけかなと思っていましたが、「おい、町長、こういうことをしたらどうだ」「こう思うがどうだ」「こういうことはやめてくれ」等々、非常に建設的な意見が多うございます。それだけ町民も参画したいわけです。同じ町内に住んでいて、自分たちも本当は参画したいのだが、今までなかった。町長室を開いたからということで、いろいろな方に来ていただいています。
また、私は時間があれば必ず地区に助役と一緒に出向いています。50人の地区、あるいは百何十人集まられるところもあります。そして、いろいろな意見を交換します。その中で最も大事なのは、首長は最終的にはどういうふうな目標で自分たちの町を引っ張っていっているのか、これに住民が非常に心配する面があるわけです。