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ご案内のとおり、ヘルパーの賃金は2分の1補助です。補助要綱にはどう書いてあるかといえば、ヘルパーは、掃除、洗濯、体を拭いたり買い物の手伝いはしてもいい。ただし、非日常的なこと、例えば田植えはだめだと書いてあります。厚生省に書類が行って、東大出の28歳の私の後輩が、非日常的な雪降ろしなんかだめだと、画一的、しゃくし定規にカットしたわけです。市の財政課長か福祉課長に「おまえ、何年指導しているんだ。補助金カットなんて恥ずかしい」などと言葉汚く言われて、福祉事務所長も愛子さんに当たったわけです。愛子さんは、おばあさんのためにやればほめられると思ったのが怒られて、どうしたらいいのか、すっかりわけがわからなくなったそうですが、これでは政策は生まれてこないのです。そうではなくて、ちゃんと下に権限を与えてやれるようにして初めて、そこから新しい施策・政策が生まれてくるのです。まさに雲泥の違いです。分権をしなければ福祉はできないわけです。

3つ目は、市役所・自治体の職員は、市民・住民参加を進める能力を持たなければいけません。この点が今まで最も遅れているところです。小さいとは言いながら市役所の役人ですから、受け付けるとか、応対するとか、まず陳情を聞くとか、住民を中央省庁の役人のように対してやるわけです。たまには、住民の方へ出向いたりして、それを市民参加と思っているのです。そうでなくて、本当に住民と一緒になって仕事をしていく。住民のほうも、役場には文句を言うか物を取ってくるだけでなく、役場に任せるのでなくて、役場と一緒になってやる。そのために自治体職員は市民の皆さんの信頼をかち取り、「市民の皆さん、一緒にやろうじゃないか。やってくれ。」と、ボランティアのすすめといえば簡単ですが、そのためには形も組織もつくらなければならない。そういうことをやる能力を持たなければいけないということです。

私は20年筋に市民参加を旗印にして試行錯誤してきましたが、市役所の位置を決めるときに、論議してとうとう市民会議が決めるという離れ技をやりました。市民合意形成方式です。原案を1つ出して賛否を問うのでなくて、たくさんの原案を出して、そのうちみんなで妥協しながら、譲歩しながら1つの結論に持っていく、これがこれからの地方自治の行き方です。

しかし、それは論議であり、まだ決定参加でしかありません。それよりも、決定したこと、やろうといったことをみんながやる。例えば分別をやろうと決めたときには、みんながやらなければ何もならない。今、日本の最大の問題はゴミ問題です。ゴミは燃やせばダイオキシン、棄てれば御嵩町で町長さんがやられてしまいます。出口がないゴミ問題、困ったものです。東京首都圏では最終処分場の容積がもうあと1年から2年の命だそうです。どこにつくるか。本当のことを言うと景気どころではないのに、日本にはまだ厚生省の本格的な解決の政策がないのです。ところが、ドイツでは最終処分場に入れるものが来ないで余っているという現実があります。ドイツができて日本はなぜできないか。これは先ほど知事さんが、幼稚園のときからゴミ・環境問題に対する教育をしているというお話をしておられましたが、後のパネルディスカッションでお話しします。

私たちは、市民参加、住民参加、決定したことをみんなで相談して、ゴミを鳥取県からゼロにする。鳥取市からゼロにする。国府町からゼロにする。そして、みんなで討議してみんなでやる。我々はやればできるのです。最後に、21世紀はどういう世界か。主役はだれか。主役は中央官庁ではありません。混沌としている21世紀、どうなるかわかりません。この混沌とした21世紀を築き、切り開いていく主役は地域であり、住民であり、その中心である自治体の皆さんだと思います。以上で私の話を終わりたいと思います。

 

 

 

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