それから、地方自治法第14条(条例)によって、我々の仕事はすべで条例に基づいてやらなければなりませんが、県は市町村の仕事について標準的な条例をつくることができるのです。したがって、鳥取市が鳥取県のつくった条例と違う条例をつくったときには、鳥取市のつくった条例が無効になります。これは県が強いということがはっきりしている法律ですので、それももちろんだめで、削除することになりました。
そのようなことがたくさんありますが、これからは国と県、県と市町村が対等にならなければいけないというので、今回そういう法的なシステムをつくったわけです。それが来年できる法律の一番の基本です。いわば対等確立と関与制限に対するシステム、枠づけができたということです。そういう点で私は積極的に買っていますが、私の次のテーマは、「第5次勧告は欠陥を克服できるか」ということです。これから第5次勧告、第6次勧告とやりますが、これは従来と全く違う第2ラウンドです。
第1ラウンドの成果は述べましたが、欠陥は何とかいえば、まず第1に、県も市町村も実際やっている仕事は今までと変わりないので、本当に変わったのかどうかわからないのです。大分県の平松知事さんがうまいことを言いました。新聞の論壇に載りましたが、「地方分権とかけてUFOと説く。心は、みんな話題にするが、だれも見た人はいない」、地方分権のことは毎日言われているが、何が変わるのかさっぱりわからないというわけです。実際はものすごく変わるわけですが、見てもわからないのです。
そこで、第2ラウンドは見える分権をしなければいけません。つまり、国がやっている仕事を県に移し、県のやっている仕事を市町村に移す。もちろんカネと人もちゃんと移す。これが今行っている第2ラウンドの分権計画です。第2に、真の分権とは、最も身近な市町村がすべての権限を持ち、仕事をすることです。市町村がどうしてもできないときには県にやってもらう。県ができないことは国にやってもらう。これが真の分権の姿です。今は国が全部責任を持って仕事をして、一部分県に移し、県からまた一部分市町村に移すという形ですが、これでは逆ピラミッドです。本来は市町村がやるべきです。ヨーロッパの自治憲章とか地方自治宣言は全部そうです。それに一歩でも近づかなければいけないというので、私たちは第2ラウンドでこれをやろうと思って頑張っています。
私はある雑誌に書いていますが、第1段階でできた分権の入り口を、これから5年みんなで頑張って実際に定着させ、力がついたら、その次は市町村に本格的な分権をやる。そのときは地方自治体の人はまなじりを決して、相手方である中央省庁から分けてもらうのでなくて取ってくる、こういう戦いというか、壮大なドラマを展開しなければいけないでしょう。5年待てば我々にその力が出てくるはずです。その第1段階ができたというふうに考えていました。
ところが、どういうわけか去年の12月に、橋本総理から諸井委員長に対して、国の仕事を県とか特に市町村に分けるようにもう一働きしてほしいという要請がありました。なぜなら、省庁再編で1府12省を提案したときに、国土交通省は人も予算もすごいものになる、そんな巨大官庁をつくって大臣は1人。3つある看板を1つにして、3人の大臣が一生懸命やっていたのを1人にしただけで、他は何も変わらないじゃないかという質問が国会であったのです。世論もそうです。それに対して橋本さんは、前々から規制緩和で国の仕事を民間に、地方分権で国の仕事を地方に、そして中央政府はスリムにします。10年で何十%人員を減らす、1,000ある国の省庁の課は何割に減らします、こういうことでやりますということで可決になりましたので、橋本さんは自分の仕事のためにも、1府12省庁をちゃんとやるためにも、地方分権に何とかしてほしいと頼まれたわけです。