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私に本当の答弁をさせるなら、「生活保護の事務は機関委任事務であって、あなた方市会議員はこのことについては質問することができないのであります。そして、私もそのことについて答弁する義務がないのであります。以上をもって答弁を終わります」と言えばいいのです。そんなことを言ったらやられますが、真実はそうです。県の仕事の7割}市町村の仕事の4割は国から命令された機関委任事務で、質問ができない、答弁の必要ない仕事なのです。それでは地方自治ではないじゃないですか。もっとひどい話がありますが、その機関委任事務を全面的に、言葉そのものも廃止するということです。

次に、「II 地方公共団体に対する関与の新たなルール」です。助言から始まって勧告、命令、指示、認可、その他全部含めて関与と言いますが、今まで国はいろいろなことを言って我々を押さえつけてきました。その国(省庁)と市町村(地方自治体)の関係はどうかといえば、従前の地方自治法第150条による包括的な指揮監督権を廃止するということです。これが大事なのです。包括的な指揮監督権というのは、このことについては国が指図をすることができる、このことについては指図することができないというのではなくて、機関委任事務についてはすべて何から何まで指図、監督してもいいということです。これではだめですから、これは一切なくしたわけです。関与の基本原則として、法定主義の原則、一般法主義の原則、公正・透明の原則を盛り込んでいます。

公正・透明の原則を読んでみると、最後に「許可・認可等の審査基準や標準処理期間の設定、公表等を定める」と書いてあります。これは従来なかったものです。鳥取県庁のお役人たちが建設省に持っていっても、気に入らなければ、「こんなのはだめだ。もう1回。県にはカラーコピーがないのか。カラーコピーで図面をつくってこなければだめだ。ほかを先にやって、おまえのほうは後だ」などとやられます。こういうのを私は何回も見てきました。旅費をかけて何人も泊まって、建設省でも何省でも、県の方々がずらっと並んで、そこで待ってやっと面接して聞いたら、「カラーコピーでない県はだめ、後回し」というような扱いを受けるわけです。そういうことではいけないので、この事務については大体3か月で判こを押します、いいか悪いか決めますというように、あらかじめ標準処理期間を発表しておきます。到達主義の原則と言いますが、必ず判こをついて本日受付けたということにして、それから3か月以内にもし態度を決定してくれなかったときには文句を言ってもいいというような制度に改めるということです。そのように、分権委員会ではなかなか細かいところまで決めて、それが今度の法律改正で出るわけです。

一番最後の「国と地方公共団体との間の係争処理の仕組み」、これが一番大事です。自治法が変わった、対等・協力になったと言いながら、国はまだ補助金を持っていますから、言うことを聞かなければカネを出さないとか、我々自治体も、ひどい法律違反の関与を受けても補助金欲しさに泣き泣き言うことを聞く。こういうことがあってはいけないので、やはり係争・もめ事を処理してくれるちゃんとした委員会をつくらなければいけないわけです。第1ラウンド、4次までの一連の我々の勧告、政府がつくった推進計画、そして、来年成る自治法の最大のかなめは、この係争処理委員会だと思います。

入り口は小さいが、道はできた。全国の元気のいい知事さん、市町村長さんたち「おかしいじゃないか」と訴えて、だんだんだんだん拡げていく。こうすれば、今すぐにはならないかもしれないが、必ずや何年後には省庁も、係争委員会に訴えられたら悪いから、こんなことは言わないほうがいいじゃないかということになるだろう。この法の建前の対等の姿は、我々最大の武器と言ったら怒られますが、これがかなめであり、これをぜひ使わなければいけないと私は思っています。そういう実績が制度を定着させ、さらに拡大するための段取り、入り口、システムができたというのが今回の一番の成果ではないかと思います。県と市町村の関係もまるっきり変わりました。もちろん対等です。後でご覧願いたいと思いますが、地方自治法第2条には県の任務が書いてあります。市町村を標準的、合理的な姿にするために、県は市町村に対して指導することができる、指導するいう任務があるというのは対等の立場から言っておかしいじゃないかということで、今回これを削除することになり、県が市町村に文句をつける権限はなくなります。

 

 

 

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